なぜ、AGCMは高額な制裁金を科したのか。それは同社が「Made in Italy」という表現を過度に強調し、あたかも車両全体がイタリアで設計・製造されたかのような誤認を消費者に与えたという主張に基づくものである。
実際には、車両の9割以上が中国で完成した状態で船積みされており、イタリアでの作業は最終的な手直しにとどまっていた。そのため、ブランドロゴからイタリア国旗のデザインを削除し、ウェブサイトや広告からもイタリア製であることを過度に強調する表現を削除するなどの対応を求められた。
イタリアのメローニ政権は、国内製造業の保護、特にMade in Italyのブランド管理を厳格化している。海外へ生産拠点を移す自動車グループを牽制する一方で、中身が中国車であるDR社がイタリア製を前面に出すことを容認しなかった。
また、他社の技術をそのまま利用するビジネスモデルは、短期的には利益をもたらすものの、ブランド独自の技術的遺産や中古車としてのリセールバリューを構築しにくいという弱点もある。
制裁金への対策か? 新ブランド展開と歴史的ブランドの買収
Made in Italyを巡り当局(AGCM)との間でグレーゾーンの議論や調査が燻る中、ディ・リシオ氏は、そういった逆風に対して素早く動いた。
EVO、Sportequipe、ICH-X、Tiger、Birbaという複数のブランドを即座に立ち上げるとともに、歴史的なイタリアの名門ブランドによるバッジエンジニアリング戦略をスピードアップしたのだ。これが、冒頭で触れたオスカやイターラの復活劇の実態である。
同社は、1907年の北京-パリレースで知られるイターラや、マセラティ兄弟が創設したオスカの商標を取得し、新型車の販売を発表した。
そして、イターラから発表された「35」や、オスカ・ブランドのMT6の実態は、やはり中国の長安汽車(Changan)などのプラットフォームをベースにしたSUVやクロスオーバーである。

