内海:あの映画のスタートはかなり大変なものでした。皆さんも覚えていると思いますが、最初の予告編が公開されたとき、それが「炎上」したんですよ。ソニックの顔もちょっと変でしたし。ファンはとても怒って、そのキャラクターデザインに対して批判的な投稿をたくさんしていました。その結果、当時のパラマウント作品の中でも、もっとも多く低評価がついた予告編になったんです。飯塚さんもあのデザインを承認していませんでしたよね? あのキャラクターは好きじゃなかったんですよね?
飯塚:ええ、承認していませんでした。
内海:そのとき私は現場にいなかったのですが、「さあ、映画化だ、これが大きなチャンスだ、やろうぜ」という流れの中であのキャラクターが描かれたわけです。ソニックファンはそれを見て怒り、その影響力はあまりにも大きかったため、パラマウントはキャラクターデザインを変更し、映画の公開日さえも延期することを決めました。パラマウントの決断は本当に素晴らしかったですね。それ以来、パラマウントはソニックがどうあるべきかについて、飯塚さんに相談しに来るようになりました。つまり、それをきっかけに、パラマウントとソニックの間で真のコラボレーションが生まれた、ということですね。
飯塚:その通りです。
内海:両社のコラボレーションは本当に素晴らしかった。映画は大ヒットしました。内容をご記憶の方ならご存じの通り、カギとなったのは人間とソニックの友情でした。セガは、これまでそのようなストーリーを考案したことがなく、物語はパラマウントの映画制作チームによる創造性の賜物でした。つまり、その後の任天堂の「マリオ」シリーズの映画にもみられるような、映画制作側とゲームクリエイターとのコラボレーションだったんです。第1作はヒットし、第2作も非常に良作で、さらなるヒットを記録しました。その間に、私たちはトランスメディア戦略を開始し、ライセンス事業を積極的に展開するとともに、ソニックシリーズのファンとのクリエイティブな活動も数多く行いました。
本田:セガとパラマウントとのやり取りは、本当に貴重な経験でしたね。飯塚さん、パラマウントの方々と直接話し合ったんですよね。どうでしたか?
トランスメディア戦略の一環としてソニックを展開
飯塚:映画のチームとはソニックのデザインについて多くの時間をかけて話し合いました。私は、ゲームでファンにとても愛されているソニックのデザインを維持したかったんです。一方で映画のチームには別の考えがありました。彼らは、現実世界に実在していてもおかしくないような新しいデザインを作ろうとしていました。
本田:現実世界に存在するソニック、と?
飯塚:ええ、ソニックが私たちの現実世界に存在するように。それが映画のコンセプトでした。どちらの意見にも理にかなった部分があったと思いますが、そのぶんデザインのプロセスはかなり難しいものになりました。しかし、内海さんが先ほどおっしゃったように、最初の映画の公開後、すべてが変わりました。彼らは私たちの意見を理解し、私も彼らの意見を理解しました。その後は同じ目標を共有し、一つのチームとして前に進めるようになったんです。私にとってはとても良い経験でした。
本田:それはいいですね。まさにファンダムの力ですね。
内海:そうなんです、それがファンダムの力なんです。ご存じの通り、今は時代が変わっています。人々が情報を得る方法も変わってきています。つまり、人々は公式発表やCMを以前ほど信頼しなくなって、あらゆることを疑い、信頼する人のおすすめだけを信じるようになっています。ですから、こうした変化に対応できる環境を整えていくことがとても重要なんです。そこで私たちは、デザイン変更前に、この件についてファンが議論するのを後押しし、変更後もファンダムの動向に耳を傾けるようにしました。
本田:内海さん、レゴやRobloxのお話はいかがでしょうか。
内海:現在、私たちはトランスメディア戦略の一環としてソニックを展開しています。というのも、私は以前ディズニーでも働いていたので、同社のライセンス体制についてはかなり理解しています。その仕組みは本当にとても優れていて、その部門は「コンシューマ・プロダクト」と呼ばれていました。
ただ、昨今では、人々はRobloxやSNSプラットフォームなどデジタル空間でも体験するようになっています。だから私は、「コンシューマ・プロダクト」という言葉はあまり魅力的ではないと思い、「トランスメディア」という言葉はどうだろうと考え好んで使っています。「トランスメディア」のほうがより魅力的に聞こえますからね。
私たちはコンソール事業を後押ししつつ、レゴやRobloxのような素晴らしい企業とも協業しています。Robloxのオーディエンス規模は巨大です。そこに参加するミュージシャンなど、さまざまな知見を活用しながら、多くのイベントを始めていく予定です。
こうしたエンゲージメントの機会を設けることで、ユーザーとのつながりを構築できるだけでなく、新しい発見の機会も創出できるのです。ミュージシャンを巻き込むことで、必ずしも製品側でマーケティング費用を負担しなくてもよくなります。つまり場合によっては、ブランドの支援をしながら同時に収益も生み出せるのです。
本田: 内海さん、トランスメディア戦略について一つ質問です。映画やレゴのように、それぞれ異なるタイプのファンがいるということですよね。そして、コンテンツごとにそれぞれ異なる接点がある。そうしたことはトランスメディア戦略の一部なのでしょうか。
内海:その通りです。ただ同時に、相性も重要で、うまく機能しなければ、IPを消費しているだけになってしまいます。私たちは、より健全なIP体験を推進し、拡大していくことに取り組んでいます。だからこそ、パートナーシップが非常に重要なのです。
本田:それがカギですね?
内海:そうです。
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