最も安いV4 Flashと最上位のFable 5を比べると、価格差は約140倍です。よく言われる「コストは100分の1」という見方は、こうした比較から生まれています。ただし、V4 Flashの総合指標は40で、Fable 5の60やSolの59には届きません。「同等の性能が100分の1」という話ではありません。
性能帯の近いGLM-5.2とGPT-5.6 Lunaで比べると、料金は5.8ドルと7ドルで、大きな差はありません。上位モデルではV4 ProがSolの約27分の1で利用できますが、前述のとおり、中国勢の最上位モデルはアメリカ勢より数カ月遅れているとされ、この価格差には性能差も含まれます。
また、名目上のトークン単価だけで、実際の運用費が決まるわけではありません。推論モデルによって、回答までに使う推論トークン数や入力トークン数、キャッシュの利用量が異なるためです。
Artificial AnalysisのIntelligence Index v4.1では、GPT-5.6 LunaとGLM-5.2の総合指標はいずれも51です。しかし、同ベンチマークにおける1タスク当たりの推定費用は、Lunaの約0.21ドルに対してGLM-5.2は約0.46ドルでした。名目料金ではGLM-5.2の方が安くても、実際のタスクではアメリカの廉価モデルのほうが低コストになる例もあります。
ただし、これは総合指標が同程度のモデルを比べた場合の話です。品質を多少妥協してでも最も安いモデルを使う動きが、大量処理のタスクを中心に広がっています。
AIモデルの統合APIサービスであるOpenRouterによると、エージェント型のリクエストは、人間主導の利用より1件当たり約15倍のトークンを消費しました。大量処理では、単価の差が総額を大きく左右するのです。
中国勢AIは開発者に人気?
中国勢AIの利用は、APIサービスと開発者向けのモデル共有基盤の両方で拡大しています。OpenRouterでは、利用トークン量に占めるDeepSeekモデルの割合が、年初の9%から6月には18%へ倍増しました。
AIモデルのオープンプラットフォームHugging Faceでも、過去1年間のダウンロード数の41%を、中国で開発されたモデルまたはその派生モデルが占めています。アリババグループのAI「Qwen」を基盤にした派生モデルも11万3000件を超えており、中国勢は価格だけでなく、開発者が自由に利用しやすい点でも存在感を強めています。
その広がりを支えているのが、学習済みのモデルのパラメーター(重み)を公開する「オープンウェイト」という提供形態です。開発者はモデルを入手し、自社環境で動かしたり、用途に合わせて調整したりできます。
ただし、学習データやプログラムの全コードまで公開するオープンソースとは限らず、改変や商用利用の条件もモデルごとに異なります。巨大モデルを自社で動かすには大量のメモリや運用人材も必要で、公開されているからといって、無料で手軽に使えるわけではありません。

