「私は物事をハッキリ言うほうだし、世界中の音楽を聞いていたりするので、『オモシレー女だ』と思ってくれたようです。今までそんな猛アプローチを受けたことがなかったので1年ほど付き合ってから結婚しました。相手の愛情を過信して、私が努力もせずに傲慢になってしまったのが離婚の原因です」
結婚してから前夫は三交代制の工場勤務になり、奈津美さんとは生活パターンが合わなくなった。そのうちに前夫の愛情が冷め始める。
「私はうつ状態がひどかったのもありますが、家事をほとんどしませんでした。でも、お弁当ぐらいは作ってあげるべきでした……。彼の帰宅時刻も家の灯りを消して寝てしまっていたこともあります。最後に彼に言われた言葉が忘れられません。『奥さんがいるのに灯りがついていない家に帰るのが嫌になった。別れてください』です」
離婚した後、奈津美さんはずっと趣味だった絵を仕事にすることに決める。漫画家を仕事としてサポートするアシスタント、通称プロアシになった。
顔も知らずに働く、いまどきの漫画アシスタント
1976年生まれの筆者は漫画家とアシスタントは同じ仕事部屋で徹夜作業しているという徒弟制度的なイメージを持っていた。しかし、現代はすべてがリモートでやり取りされて、お互いの顔すらわからないことが少なくないらしい。ここからは漫画家としてのキャリア20年以上で、奈津美さんと結婚してからは都内に注文住宅を建てたという晴彦さんに解説してもらおう。
「アシスタントは出版社の編集者から紹介してもらうこともありますが、斡旋サイト上で採用するほうが主流です。僕は今まで何十人と採ってきたけれど、プロフィールや面接ではほとんど何もわかりません。仕事をやるとすぐにメッキが剝がれる人もいます。カミさんを採ったときはプロフィールの中身を見ずにリスト順に3人採りました」
上から目線というわけではないが、忖度をせずにズバズバと発言する晴彦さん。感情や意見を正確に伝えたいという欲求が強いのかもしれない。アシスタントにも「お互いに納得できるまで言葉のやり取りをする」「失敗をしたらそれを自分で取り戻す」という誠実さとコミュニケーション能力を求めている。そして、奈津美さんは「適格者」と認定した。

