いわゆる大きい病院の中で、大学病院とそれ以外の公立病院の最大の違いは何か、みなさんはご存じだろうか。
それは医者の数である。大学病院には医局という制度があり、教授を頂点としてピラミッド型に大勢の医局員がいる。医局員は交代で大学の「関連病院」と呼ばれる公立病院に年単位で出向する。大学の医局は医者のバッファー(緩衝地帯)みたいになっているので、とにかく医者が多い。
小児外科は小さな科ではあるが、それでも10人以上の医師がいる。そのメンバーで年間に400人くらいの手術をこなす。では、公立病院はどうか? たとえば千葉県こども病院小児外科。こちらも年間の手術件数は400例くらいだ。でも医師は3人。つまり3人いれば、400例の手術は(忙しいけど)十分にこなすことができる。
大学病院では中堅医師に「手術が回ってこない」
大学病院は医者の数が多いし、メジャーと呼ばれる高難度の手術は教授が独占的に執刀するので、中堅の医師にはなかなか手術が回ってこない。ぼくが大学病院にいた頃、これが中堅の医師たちの最大の不満だった。
外科医の評価とは、手術の腕前であり、手術がうまいとは経験を積んでいるということである。
小児外科の世界には「指導医」という資格があり、誰もがこの資格に憧れる。でも指導医への道は厳しい。新生児手術40例、メジャー手術40例(同じ手術のダブリはNG)を経験しないといけない。このハードルがなかなか越えられない。
なので、若手の時期を過ぎた中堅たちはいつも「手術が回ってこない」とグチっていた。いや、グチというレベルを超えて大きな不満を溜め込んでいた。

