

これ、自分が初めて読んだときは「そんな単純な話か?」と思ったんですが、いろいろな人を見てきたいまは、「あ、これはかなり本質を突いているぞ」と感じるようになりました。
というのも、「感情的になっているときこそ、その人の本音が出る」「取り繕っていない、素の姿だ」と考える人って、けっこう多いんですよね。感情を出すことは人間らしい、生々しくて正直だ、というイメージ。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいんです。感情的に動くというのは、裏を返せば「動物的」ということでもあります。お腹が空いたら怒る、気に食わないことがあったら怒鳴る、目の前の快楽に飛びつく——これは、そのまま動物の行動原理そのものですよね。
感情との付き合い方を知っている人
だとすると、人間の知性というのは、その動物的な部分を、どう飼い慣らすかにこそあると言えるんじゃないでしょうか。
これ、実は脳科学の世界でもよく語られている話なんです。怒りや恐怖といった感情は、脳の中の大脳辺縁系という、動物にも共通してある古い部分で生まれる。
それを抑え込むのが、人間で特に発達している前頭葉(前頭前野)——理性や判断をつかさどる、いちばん新しい部分。つまり、「湧いてくる感情そのもの」は動物と同じで、「そこから先どうするか」が人間の知性の勝負どころだ、ということですよね。
僕は、「頭がいい人」というのは、感情に左右されない人のこと『ではない』と思っています。人間である以上、感情に左右されるのは当たり前です。上司の一言でカチンとくるし、失敗したら落ち込むし、褒められたら舞い上がる。それはもう、避けようがない。
そうではなくて、頭がいい人とは、感情には左右されるんだけれども、それをどう抑え、どう扱うかを知っている人のこと。生々しい怒りや不安が湧いた瞬間に、それを一回自分の外に置いて、「さて、この感情とどう付き合おうか」と眺められる人のことなんです。
アンガーマネジメントという言葉が、いまビジネスの世界ですっかり定着していますよね。「怒りを感じてから6秒待て」なんてよく言われるやつです。あれって、まさにこの話なんですよ。怒るなと言っているんじゃない。怒りは湧く。でも、湧いた瞬間にそのまま口や手を動かすんじゃなくて、一度前頭葉に処理させてから動きなさい、という技術の話。「感情に流されるかどうか」を、精神論ではなく、トレーニング可能なスキルとして扱っているわけです。

