それから500年後の西暦2世紀、重要なストア派哲学者である、ローマ皇帝マルクス・アウレリウス(121~180年)が登場する。彼は当時の皇帝が直面していた腐敗との戦いやゲルマン民族との抗争といった課題に対処するため、哲学教師たちの助けを借りてストア派哲学を学んだ。
ストア派哲学は、マルクス・アウレリウスにとって国を治めるうえで大いに役立った。また、逆境に対処するための方策も学べた。彼はその生涯で、妻と、14人の子どものうち9人を失っている。信頼していた将軍に裏切られたこともあった。彼はストア派哲学の教えに従うことで、こうした逆境を乗り越えたのだ。
マルクス・アウレリウスはゼノンの哲学に独自の解釈を加えた。彼は“人生に起こるすべてのことは、たとえ逆境でさえも役に立つ”と考え、人間の精神力を火に例えてこのことを説明している。小さな火は、何かを投げ込めばすぐに消えてしまう。弱い精神力が、わずかな挫折で簡単に挫けてしまうのと同じことだ。
しかし大きな火は、投げ込まれたものをすべて焼き尽くす。むしろ、炎はさらに燃え上がる。同様に、強い精神力は逆境を燃料に変える。
マルクス・アウレリウスは、逆境を自らの情熱の炎を勢いづける燃料にした。彼はある文章(他者への戒めではなく、自らへの戒めとして書かれたもの)の中で、こう記している。
「これは私にとって不運ではなく、むしろ幸運なことだ。たしかに私は逆境に見舞われたが、それに苦痛なく耐えられる。現状に押しつぶされることも、未来に不安を感じることもない」
これはストア派哲学の典型的な考え方だ。
挫折は人生の一部
ストア派哲学は、困難の時代に生まれた。当時は頻繁に戦争や飢饉、疫病が起こり、そのたびに世の中は大打撃を受けていた。そのため、人々は肉体的にも精神的にも自らを武装することが重要だった。今日の社会、特に西洋社会では、人々は何かが不足していることよりも、何かが過剰にあることによって命を落とす可能性が高く、それが様々な課題を生じさせている。私たちは、大量の情報や、大量の食べ物など、現代社会に溢れている過剰なものから身を守らなければならない。

