「物言う株主」の代表を、取締役会に迎え入れる――。
東京証券取引所プライム市場に上場するフォスター電機が、前代未聞の決断を下した。6月に開催した株主総会で社外取締役に就任したのは、筆頭株主である投資ファンド「アクシウム・キャピタル」の最高経営責任者(CEO)・門田泰人氏だ。
アクシウムが同社株の大量保有を届け出たのは2025年9月。当初の保有比率は6%超だったが、そこから凄まじい勢いで買い増しを進め、筆頭株主に浮上。26年3月末には保有比率が20%を超えるまでに達した。
音響機器専業のフォスター電機は、名前は表に出ない「黒衣」メーカーだ。世界の高級音響ブランドや大手自動車メーカーに、Tier1(1次部品メーカー)を通じてスピーカーを供給している。車載スピーカーの分野では世界シェアおよそ30%を握るとされ、主要な自動車ブランドのほぼすべてと取引がある。
ただし、これまでの道のりは平坦ではなかった。10年代はアップルのiPhone向け同梱イヤホンの供給が収益柱になるも、苛烈な競争の中で撤退を決断。イヤホン事業からの脱依存を図り、成長市場の車載用スピーカーへ軸足をシフトさせてきた。いまでは売上高の80%を超える主力事業へと育っている。
業容転換を遂げ、ようやく足元の収益が安定した今、なぜあえてアクティビストを取締役会に招き入れる必要があったのか。決断を主導した岸和宏社長を直撃した。
■フォスター電機 社長CEO 岸和宏
「経営コンサルは大嫌いだが、アクシウムは同じ船に乗る当事者」
ーーアクシウム・キャピタルが昨年9月に6%超の大量保有報告書を提出して以降、驚異的なスピードで買い増しが進み、いまや20%を超える筆頭株主です。当時の状況を教えてください。
正直に言って、買い増しのスピードには驚いた。当時は「株価を上げるのが間に合わなかったな」という反省もよぎった。最初は担当者レベルのIR対応だったが、大量保有報告書提出前後の昨年9月を境に、トップ同士の対話に切り替えた。
(門田氏の第一印象は)ちまたで言われるような「コワモテの、脅してくるアクティビスト」という雰囲気は微塵もなかった。極めて真っ当で、紳士的、そして謙虚なプロフェッショナル集団だという印象を持った。
彼らは当社のデータや業界構造を徹底的に勉強し尽くしたうえで、非常に的を射た質問を投げかけてきた。最初の面談から互いに話が盛り上がり、予定時間を大幅にオーバーしてしまったほどだ。
ーー6月の株主総会でアクシウムの門田氏が社外取締役に就任しました。社外取への就任は門田氏側が切り出したようですが。
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