こんなカラスにとって、以前の東京は天国だった。
毎日、繁華街の無数の飲食店からゴミ袋が出てくる。市街地でも、毎日とはいかないが、家庭ゴミが必ず出る。そして、その中身は人間用の食べ物、柔らかくて栄養価の高いものばかりである。
カラスが好きなのは糖質と脂質、そしてタンパク質だ。
フライドポテト、チキンナゲット、焼き芋、マヨネーズあたりが大好物である。肉バルの前で夢中になって鶏モモ肉を食べているカラスを見たし、ケーキ屋の前で袋いっぱいのホイップクリームに嘴を突っ込んでいるカラスも見たことがある。
都市部にカラスが多い理由は明快だ。餌があるからである。
皮肉なことに、その餌の多くの部分は人間が用意している。もちろん、都市部でも果実や昆虫など、天然の餌資源は利用する。もっとも、これも都市計画に従って作られた公園や街路樹が供給源だ。
言ってみれば、人間は都市でカラスを飼っていたのである。
ゴミ対策により、東京のカラスは8割減少
東京都はカラス対策として、毎年、個体数調査を行っている。これは全個体数ではなく、主要なねぐらに集まるカラスを数えたものだが、増減のトレンドを見ることはできる。
これによると、2003年には3万6000羽を超えていたカラスが、25年には約7500羽。実に5分の1近くに減少している。その大きな理由は、ゴミ対策だと考えられる。
東京都ではカラスの駆除や巣の撤去も行っているが、ゴミネットや折りたたみ式ダストボックス導入の補助も行っていた。また、民間でもゴミネットが普及した。
さらに、近年、集合住宅で導入が増えているのが金属製のダストボックスだ。この威力は絶大である。
私の住んでいた通りは同じ管理会社のアパートが何軒もあったのだが、この会社がダストボックスを導入し、一斉に設置したことがある。途端、それまでその通りを餌場にしていたハシブトガラスが、姿を見せなくなったのである。

