有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ

オフィスの窓辺に「サバの頭」の置き土産…《カラス天国》東京で、ゴミを漁るカラスと人間の"共同生活"に生じた異変

7分で読める
カラス 焼き芋 ナゲット
今日のごはんは焼き芋、ホイップクリームにナゲット。こんな日はいつまで続くかな?(イラスト:タナカケンイチロウ)
  • 松原 始 動物行動学者、東京大学総合研究博物館・特任准教授
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

もちろん、それでカラスが「消え失せる」わけではない。そのペアはゴミネットを利用しているマンションに狙いを変え、そちらで餌を漁るようになった。

20年あまり前も、実家のあたりでネットかけが普及し始めると、カラスは行動圏をズラしてネットのないゴミ置き場を狙い続けた。

そしてすべてのゴミ置き場にネットが導入されると、それまで放浪した範囲すべてを行動圏に含めてしまった。日によってガードの甘いゴミ置き場が一箇所くらいはあるからだ。

逆に言えば、以前より広い範囲を確保しないとカラスは生きていけなくなった。言い換えると、カラスの密度が下がったのだ。

これは環境収容力(キャリング・キャパシティ)と呼ばれる概念だ。その環境はどれだけの個体数を受け入れられるか、を示すものだ。

収容力は餌量であったり、営巣場所であったり、その生物に必要な資源によって決まる。東京のカラスの場合、大量に供給されていた餌が、収容力を押し上げていたと考えられる。

カラスに莫大な餌を与えながら駆除する皮肉

環境収容力をそのままにカラスを駆除したとしても、カラスは他所から入ってくるか、その年に生まれた若鳥が生き残って埋め合わせてしまう。実際、東京都は最大で年間1万8000羽ほども駆除していたのである。

だが、年間の減少数はもっと少ない。02年と03年の間で1万2000羽ほど減ったことはあるが、他は2000とか3000羽、それどころか増加した年まである。

まったく計算が合わない理由の一つは、駆除しても東京が住みやすければ他所から入ってしまうからだ。

考えてみれば、人間は自然環境を改変し、多くの生物を減らしてきた。狩猟や捕獲のような直接的な方法でなくとも、環境収容力を奪うことで効果的に打撃を与えたのである。

一方、カラスに対しては意識しないまま莫大な餌資源を与えて環境収容力を高止まりにしながら、「カラスが増えすぎたから減らそう」と言っていたわけだ。

なかなかに皮肉の効いた話だと思う。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数