岡村弁護士によると、共同親権導入以前、単独親権が相当と考えられていたケースについて、家庭裁判所の判断が大きく変わったという印象はないという。
「現状、父母の対立が強い事案では、やはり共同親権は難しいという判断になっているように感じます」
もう一つの変化は、すでに離婚した父母の間で起きているという。単独親権から共同親権へと変更を求める申立てだ。
「家庭裁判所の統計を見なければ正確なことはわかりませんが、想定していたほど爆発的に増えている印象はありません。ただ、それでも増えているなという実感はあります」と岡村弁護士は話す。
岡村弁護士によると、その内容にも一定の傾向が見られるという。
「弁護士が代理人として付いておらず、本人による申立てが非常に多いです。中には、生成AIの活用がうかがわれるような長文の申立書も見受けられます。
一見すると丁寧な文章なのですが、内容を読むと相手方への非難が中心になっているものもあります。『あなたの子育てでは心配だ』といった内容が長く記載されているケースもあり、中には20ページ近い申立書もありました」
「共同親権を申し立てるぞ」が交渉カードになる?
DV被害者の支援を続けてきた岡村弁護士が特に懸念しているのは、共同親権の申立てが元配偶者との交渉材料として使われるケースだ。
家庭裁判所は子どもの利益や安全を考慮したうえで面会交流の回数などを決めるが、別居親の希望どおりにならないことも少なくない。
そうした中、単独親権を持つある同居親のもとに、別居親からこんなメッセージが届いたという。
「共同親権を申し立ててほしくないなら、面会交流の回数を増やせ」
岡村弁護士によると、実際に共同親権の申立てを受けた側には大きな負担が生じる。
「申し立てた本人は弁護士に依頼もしていないことも多く、負担は比較的小さいです。
しかし、申し立てられた側は長文の書面を読み、対応を考えなければなりません。仕事や育児に追われる中で、自分での対応が難しいと感じれば弁護士への依頼も検討することになります」
法テラスを利用した場合でも、一定の費用負担は生じる。
「認められる可能性が高くない申立てであっても、申し立てられた側には精神的・経済的負担も生じます。そのため、中には、相手方への圧力や交渉材料として利用されているのではないか思わざるを得ないケースもあります」
夫からDVやモラハラを受けている女性の中には、「どうせ離婚しても、共同親権にさせられて、夫の鎖から逃れられないんですよね」と不安を口にする人もいるという。

