一方で、共同親権へとスムーズに移行し、制度が機能しているケースもある。
「子どもが中学生や高校生など比較的年齢が高く、父母双方が子どもの意見を尊重できるケースです」
離婚後も、父母の間に一定の信頼関係が残っており、共同親権について双方が合意している場合には、大きな問題は生じにくいという。
「共同親権そのものに経済的メリットがあるわけではありませんが、『親権者である』という意識から、別居親が学費負担などに協力的になることを期待して選択するケースもあります。そうした事案は、4月以降に申し立てをして、すでに手続きが終わっています」
もっとも、それは制度によって関係が改善したわけではないと岡村弁護士は指摘する。
「もともと協力できる父母だからうまくいくのであって、共同親権の制度そのもが関係を改善したわけではありません」
今後の焦点は家裁の運用
岡村弁護士は、今後の最大の焦点は家庭裁判所の運用だと話す。
「裁判所が高葛藤事案やDV・モラハラ事案に対して、どのような基準で共同親権の適否を判断していくのかが重要です」
特に重視すべきなのは、子どもの安全と生活の安定だという。
「実際に子どもを育てている親が安心して生活できることは、子どもの利益そのものです。
身体的暴力だけでなく、精神的暴力やモラハラも含めて評価しなければなりません」
そのうえで、制度導入による前向きな変化もあると話す。
「共同親権の議論を通じて、DVや虐待、精神的暴力が子どもに与える影響に注目が集まるようになったことです。
民法にもDVや虐待に関する考え方が新たに明記されました。裁判所には、その条文の趣旨を丁寧に運用してほしいと思います」
制度が始まってまだ3カ月。共同親権導入は、「父母が離婚した後もこどもの利益を確保すること」を目的としている。
岡村弁護士は「本格的な評価ができるのはこれから」としたうえで、「子どもの安全と利益を最優先にした運用が続くかどうかが問われている」と話す。
制度が実際にどのように定着していくのかは、今後の家庭裁判所の運用や実務の蓄積によって見極められていくことになりそうだ。

