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台湾で発生した日本人ジャーナリスト襲撃、背後に浮かぶ中国による「越境弾圧」というやり方は日本人にも無関係ではない

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台湾拠点に「知中・親台」知識人として著名なジャーナリストの矢板明夫氏(写真:フェイスブック「矢板明夫倶楽部」/今周刊)
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台湾ではかつて、国民党政権下で政府に批判的な言論人やジャーナリストが弾圧や暗殺の対象となった歴史がある。その代表例が「江南事件」である。

1984年10月、アメリカ在住の台湾系アメリカ人作家・江南(本名・劉宜良)が、カリフォルニア州の自宅前で射殺された。当時の指導者・蒋経国に批判的な伝記を出版したことが事件の背景にあったとされ、台湾国防部情報局が反社会勢力を利用して暗殺を実行したことが、後の捜査で明らかになった。

アメリカ政府の強い圧力を受け、台湾当局は最終的に事件への関与を認め、情報局長らが処罰された。この事件は、台湾社会が独裁体制を見直す契機の一つになったと評価されている。

思い起こされる「江南事件」

こうした歴史的経緯から、民主化後の台湾では言論の自由が極めて重要な価値として位置付けられてきた。現在の台湾社会において、政治的立場を理由にジャーナリストへ暴力を加える行為は、民主化以前の時代を想起させるものとして強い拒否感を呼んでいる。

台湾の多くのメディアや評論では、今回の事件は矢板氏個人だけを狙ったものではなく、中国共産党に批判的な言論活動を行う知識人やメディア全体に対し、「次はあなたかもしれない」という恐怖を与えることを目的とした威嚇ではないかとの見方が示されている。

暴力によって社会に萎縮効果を生み出し、メディアや市民の自主規制を促そうとする狙いがある可能性も指摘されており、台湾の民主主義の基盤を揺るがしかねない問題として受け止められている。

安全保障の観点からも、この事件は、中国が台湾に対して進める「越境弾圧」の新たな局面を示す可能性があるとして注目されている。

台湾外交部や大陸委員会は、事件が26年7月1日に中国で施行された「民族団結進歩促進法」と時期的に近接して発生した点にも注目している。同法は、中国が定義する「民族の団結」を損なうと判断した言論などへの規制を強化する内容を含むとされ、欧米諸国や人権団体からも懸念が示されている。台湾当局は、事件との関連性について慎重に捜査を進めている。

また、大陸委員会は、香港の民主活動家が台湾で襲撃された過去の事件との共通点についても言及している。今回の廖容疑者は、中国広東省出身で香港特別行政区旅券を所持し、その資格を利用して台湾へ入境した後、犯行直後に韓国への出国を図った。台湾当局は、このような「実行後すぐに国外へ離脱する」手口についても計画性の有無を含めて捜査している。

さらに警察・検察は、土地勘の乏しいとみられる容疑者が複数のホテルを転々としながら矢板氏の行動を把握していた経緯を重視しており、台湾国内に協力者や支援者が存在した可能性も視野に捜査を進めている。

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