矢板氏が現在最も力を注いでいるのが、自ら創設した「インド太平洋戦略シンクタンク」の運営を通じた、台湾の自由と民主主義の擁護、そして日本をはじめとする国際社会との懸け橋となる活動である。
同シンクタンクでは、台湾海峡の緊張度を数値化した「台湾海峡安全指数」や「台湾海峡情勢リポート」を毎月、日本語・英語・中国語の3言語で発行。中国による軍事的圧力や地域情勢を客観的なデータとして分析し、国際社会へ向けて発信している。
また、顧問には、日本の元防衛副大臣や元航空自衛隊中将、アメリカのシンクタンク「ハドソン研究所」の元中国センター長、台湾の退役少将や大学教授ら、日米台の安全保障・外交・学術分野の専門家が名を連ねる。安全保障分野における日米台の連携強化や政策提言にも取り組んでいる。
ジャーナリスト襲撃は単なる傷害事件ではない
さらに、日台の交流を深めるためのセミナーやイベントも精力的に開催している。26年9月には日本の国会議員団を台湾へ招き、日台関係の強化を図る計画を進めているほか、過去には中国出身で日本国籍を取得した知識人を招いた講演会を企画するなど、台湾の国際的な発信力を高めるプラットフォームづくりにも力を注いできた。デジタルメディアを通じた情報発信にも積極的で、幅広い読者・視聴者層を獲得している。
矢板氏は、単なるニュースの伝達者ではなく、「知中・親台」の論客として、中国の脅威を国際社会に伝え、台湾と世界を結ぶ安全保障・言論プラットフォームの構築に取り組んできた。
そのような活動を続ける中で今回の襲撃事件が発生したことから、台湾当局や安全保障の専門家の間では、事件の背景に政治的意図や組織的関与が存在する可能性が指摘されている。
台湾政府や司法当局、主要メディア、そして安全保障分野の有識者が、矢板氏襲撃事件を単なる傷害事件ではなく、「国家安全保障に関わる重大事案」として強い警戒感を示している背景には、台湾が歩んできた歴史と、中国による対台湾圧力の変化という2つの側面がある。
台湾社会にとって、「言論の自由」と「政治的暴力の排除」は、長年にわたる独裁体制と白色テロを乗り越え、多くの犠牲の上に築き上げられた民主主義の根幹である。

