肝臓はアルコールを分解するだけの臓器ではなく、体内の解毒やエネルギー代謝を担う、巨大な化学工場です。そして、この工場は熱に対して弱いという特徴を持っています。熱中症で体の深部体温が上がると、肝臓は極めて早い段階からダメージを受け始めます。具体的には次の3つの問題が肝臓で起こります。
・熱による肝細胞のダメージ
私たちの細胞はタンパク質でできていますが、このタンパク質は熱によって変性します。具体的には、深部体温が上がって40℃を超え始めると、肝細胞も変性して、その機能を失っていきます。
・脱水や再灌流によるダメージ
人間は暑さを感じると、汗をかいて熱を逃がそうとします。そのときに血液の多くが皮膚に集中するため、内臓(特に肝臓や腸)には血液が十分に届かなくなります。その結果、肝臓は一時的な脱水・酸欠状態に陥ります。
この脱水・酸欠状態でも肝臓はダメージを受けます。さらに、涼しい場所に移動したり、治療を受けたりして急激に体温が下がると、今度は血液が一度に肝臓へと流れ込みます。その際に生まれた活性酸素による酸化ストレスで、肝細胞に大きなダメージが生じます(虚血再灌流障害)。
・腸の毒素によるダメージ
熱中症になると、腸にあるバリア機能も本来の役割を果たせなくなります。
私たちの腸内にはさまざまな細菌が存在していますが、熱中症によって腸のバリア機能が低下すると、細菌由来の毒素が血液中に漏れ出します。この毒素が腸に直結している血管(門脈)を通って肝臓へと流れ込むと、そこで炎症が起こって肝機能を著しく低下させます。
「2〜3日後」に症状が出る
炎天下での外回りや、休日のテニス、ゴルフなどで熱中症っぽくなった場合、まずは体を冷やして休むと思います。それで回復しても、安心しないでください。まして元気になったから大丈夫と、お酒を飲むのも控えてほしいと思います。
先ほど説明した細菌由来の毒素が肝臓にダメージを与えるまでには、2~3日のタイムラグがあります。したがって、熱中症で救急搬送された直後の血液検査では、肝臓の数値(ALTやAST)が正常であることも少なくありません。

