岸壁や堤防の際を探りながらクロダイを狙う「ヘチ釣り」が人気で、SNSなどでは大物を釣り上げる様子が次々にアップされている。
一体、東京湾の中で何が起きているのだろうか。
東京湾の魚に詳しい神奈川県水産技術センター元主任研究員の工藤孝浩氏は、「現在、東京湾の生態系そのものが、温暖化を背景にシフトチェンジ(大きな転換)の真っただ中にあり、急速に様相を変えている」という。
温暖化による海水温上昇の影響も
クロダイが目立つようになった背景として工藤氏は、温暖化による海水温の上昇と酸素が少ない水の塊を指す貧酸素水塊の発生の2つを挙げる。
海底ではプランクトンなどの死骸を分解する際、海中の酸素が消費される。一方、海洋生物の生存に欠かせない酸素は、水温が低いほど水中に溶け込みやすい性質がある。
このため、閉鎖性海域である東京湾では、夏場に水温が上昇すると、表層と底層の水が混じりにくくなり、底層の酸素濃度が低下する。こうして貧酸素水塊が発生する。
貧酸素水塊は、とりわけ海底付近に生息する生態系へ影響を及ぼす。海底に生息する貝やゴカイなどの底生生物が減るため、それらをエサとするカレイやアナゴなどには死活問題だ。工藤氏は「海底での貧酸素化は、こうした魚たちとその餌生物をダイレクトに死滅させてしまう」と語る。
貧酸素水塊は底層生物に壊滅的な打撃を与えるが、海底の貧酸素水が湧き上がって「青潮」が発生すると、表層の魚介類の大量死を招くこともある。温暖化は、表層と底層の海水が混じらない期間を長引かせ、貧酸素水塊の発生期間の長期化を招くという。

