「年間売り上げや効率のよさだけを追う企業では、私たちのアセスメント販売(R)は採用されなかったと思います。でも、私たちの一番の思いは『自転車を売ること』や『数字を追うこと』ではありません。『今日も楽しかったね』と、家に帰ってこられて、お出かけが当たり前にできることなんです。長い目で見れば多くの人から信頼される、確実な販売方法だと思います」
「おでかけじてんしゃ」という新しい構想へ
冒頭の話に戻ろう。26年の改正道路交通法により、自転車に人を乗せる行為に「青切符」が導入されることになった。グレーゾーンとされてきた「自転車に子どもを乗せる行為」も取り締まりの対象となり、社会的に注目されている。中原さんは「子どもの年齢制限の見直し」や「安全な移動の選択肢の確保」をさらに進めるため、新しい構想へ向けて動き出している。それが「おでかけじてんしゃ(キャリアサイクル)」という概念だ。
「最初にお話ししたように、自転車に子どもを乗せざるを得ない人はたくさんいます。これまで小学生以上の子どもの親や、障害のある子どもの親にアンケートを取っても、子どもを自転車に乗せたいという声はとてもたくさんありました。自転車で移動するのは、小回りも利くし、とても便利なんです。子どもがいる家庭の切実な願いを、どうにかしたいと思っています」
中原さんが目指しているのは「自転車に人を乗せ、送迎している景色が当たり前になる社会」だ。今後は、おでかけじてんしゃという概念のプロジェクトを通し、共感してくれる人を集め、さまざまな企業が参画して人を乗せる自転車が日本に根づくための活動をしていく。
「もちろん、現状では難しいことはたくさんあります。でもまずは、皆さんにこういう問題があると知ってもらうことが大事だと思っていて。今回、青切符が導入されたことで、たくさんの人が『自転車に子どもを同乗させられないと困る』と気づくことになりました。みんなが今のままでいいのか考えるようになったのは、とても意義のあることだと思います」
安全に人を乗せるためには法改正も必要なうえ、車体も変える必要があるだろう。実現させるためには、途方もなく大きな課題が山のようにあるはずだ。それでも中原さんは、かならず変えると強い信念を抱いている。
「以前の道路交通法では、6歳になったら自転車に乗せられないという決まりがありました。周囲からはそれを変更するのは絶対無理だと言われていたんです。でも声を上げ続けていたら、変えることができた。
『おでかけじてんしゃ』もきっと実現すると考えています。自転車はとても気軽に移動できる便利なもの。だから、誰もが自由に使え、おでかけを始められるきっかけとなる自転車として、日本の文化にしたいんです」

