大人になるとルーティンが増えます。毎日同じ時間に起き、会社に行き、似たような仕事をこなす。繰り返しが多いほど、一つひとつの出来事は特別さを失い、印象に残りにくくなります。時間に注意を向ける回数も減り、「この作業はこれくらいでできる」とわかると、時計を見ることも少なくなります。認識される出来事の数が減ると、時間は心理的に圧縮されるのです。
記憶が多い人ほど、時間は豊か
では逆に、時間を伸ばすことはできるのでしょうか。「もう年末か」「今年も早かったな」――こう感じるとき、私たちは一年をひとまとめにしてしまっています。でも「今年の正月は何をしたっけ」「春にどこへ旅行したっけ」と、個別のイベントを思い出すと、時間が膨らみます。
思い出せるイベントの数が多いだけで、一年はぐんと〝伸びる〟のです。カリフォルニア大学のソニア・リュボミアスキー教授の研究※1によると、思い出せるエピソードが多い人のほうが、幸福度や充実感が高いそうです。
重要なのは「その瞬間に楽しかったかどうか」ではなく「いま思い出せるかどうか」。記憶こそが、時間の豊かさを決めているのです。また、「新しい体験を増やすこと」も有効です。行ったことのない場所に行く。やったことのないことをやってみる。そうした「初めて」を意識的に増やすことで、時間の密度は上がります。年齢に関係なく、時間を豊かにすることは可能なのです。
※1 ソニア・リュボミアスキー教授の研究……カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授による幸福度研究。幸福な人はポジティブな記憶をより多く「貯蓄」し、ネガティブな記憶を「対比」する傾向があることを発見。著書『幸せがずっと続く12の行動習慣』で広く知られる。

