今でこそ、誰もがつぶやくサウンドロゴになっているが、当時の評判は芳しくなかった。「テレビCMに採用された当初は、耳障りなCMと評価されてしまっていました」と石丸社長は苦笑いをする。
「予算の都合上、作り直すわけにもいかない。ところがこれを長年流し続けたのが功を奏しました。関西の芸人さんたちがこのサウンドロゴをいじって、面白おかしく盛り上げてくれたのです。そこからお子さんから年輩の方まで、このサウンドロゴを聞いただけで伯方の塩を思い浮かべてくれるようになったと感じています」(石丸社長)
伯方の塩がお茶の間に浸透し、愛されるブランドへと成長を遂げるきっかけを作ったサウンドロゴ。しかしその裏で、会社経営の現場には、伯方塩業の存続を揺るがす受難の嵐が近づいていた。
塩の自由化で市場の奪い合いに
最初の逆風は1997年に始まった塩の自由化(国による塩専売制度の廃止)と、2002年の完全自由化だ。国内では地場産業としての塩生産者が増加し、岩塩や湖塩など日本では珍しかった塩商品が輸入されるなどして、商品数も激増した。
「塩の消費量は限られていますから、市場の奪い合いになります。日本の消費者の方々も、物珍しさもあって海外の岩塩を購入したり、海外の天日塩の方がミネラル豊富などと思われたようで、伯方の塩も一時的に売り上げが伸びていかないことがありました」(石丸社長)
さらに受難は続く。2003年には人気番組「トリビアの泉」で、「伯方の塩は伯方産ではなく、メキシコ産」などと面白おかしく取り上げられ、また2004年には、公正取引委員会から「伯方の塩 焼塩80gビン入り」の商品表示に対して景品表示法に違反する恐れがあると警告を受けてしまう。
そもそも伯方の塩は、創業当時に国が課した条件により、輸入塩を瀬戸内海・伯方島の“にがり”が含まれた地下水で溶解して、それを釜で煮詰めて結晶化する製法で作られている。輸入塩を原料に使っていることは、創業時から袋商品には表示していた。一方、卓上用の「伯方の塩 焼塩80gビン入り」には記載していなかった。
「『トリビアの泉』で、輸入塩の使用が話題になった時には、現在でいう炎上のような状態にはなりましたが、弊社としては逆風としては捉えておらず、『伯方の塩を知ってもらえるいい契機になった』ぐらいに感じていました。
『伯方の塩 焼塩80gビン入り』は容器が小さく、スペース上の問題で、“輸入天日塩田塩と日本の海水が原料”との表記を入れていませんでした。そのことが優良誤認にあたるという警告の内容で、これは弊社の落ち度でした。他商品には記入してあったのですが、ニュースなどでは『虚偽表示』という面のみが切り取られて報道されてしまいました」
これはさすがに大きなダメージとなった。伯方の塩を使用しているメーカーから「イメージダウンになるから今後、使用は控えさせていただきます」などの声もあり、売り上げがマイナスに落ち込んだという。
加えて、少子高齢化や人口減少、そして厚生労働省による減塩の推進もあり、家庭での塩の消費量は年々減少傾向にある。もちろん伯方の塩もこの影響を受け、平成初期をピークに売上は若干、右肩下がりになっている。

