だが、“シェア”という面で切り取ると、違う側面が見えてくる。この塩業界全体の落ち込みの中で、トップを走る伯方の塩の“シェア”は伸び続けているというのだ。
石丸社長は、「気に入ってくださるお客様がいることと、伯方の塩ブランドの知名度が高いことがアドバンテージになっていると思います」と分析する。
「そもそもが、品質よりも生産効率を優先した塩に切り替わることに疑問を呈した消費者運動から始まった会社です。消費者アンケートの結果を見ても、信頼性、品質の良さ、創業当時から変わらぬ塩つくりへの想いが消費者に伝わっているという結果を得ています」(石丸社長)
現在伯方塩業は、JR松山駅のコンセプトショップ「with salt 伯方の塩」、松山空港の飲食店「Stand Bar『Tabijio』」、工場見学施設の拡充、塩まつりイベントなど、流通を介さず消費者と向き合う取り組みを始めている。こうした活動の根底にあるのは、創業以来変わらぬ「消費者との対話」という姿勢だ。
塩を選ぶことは、食を選ぶこと
石丸社長は話す。
「我々は、“塩は選んで使いましょう”ということを一貫して伝えてきました。別にそれが伯方の塩じゃなくてもいい。塩田が盛んだった頃を知っている年配の方は理解を示される方が多いですが、食べたものが自分の健康を作っていくからこそ、安全な塩を選ぶという意識をもっと持ってもらいたいと感じています。
全国の小学校から専門学校・大学まで、塩の出前講座で塩の役割について講演を行っていますが、弊社は愛媛県の一企業に過ぎませんので、限られた方々にしか伝えられていません。もっと多くの方々に、食や塩の大切さを伝えていく──そんな企業になっていければと思います」
1973年、5万人の署名と「塩の出世払い」で生まれた伯方塩業。自由化、誤解を伴う報道、減塩のトレンド――幾度もの逆風を受けながらも、同社が半世紀以上にわたって支持され続けている理由は、単なるブランド力ではない。「塩を選ぶことは、食を選ぶこと」。その創業時から変わらぬ信念こそが、今なお消費者の共感を集めているのかもしれない。

