効果はてきめんで、区議から事情を聴かれた相談担当幹部はその翌日、AさんとBさんにメールを送る。そこには前言を翻すように「今回の案件はハラスメントにあたる言動があったことが濃厚と判断しており、総務部内で情報共有している」と記されていた。
世田谷区のハラスメント調査から処分に至る全体像についても初めて説明があり、「部長の事故報告書を受けて総務部が『事故監察』を実施し、処分の検討が必要な際は外部の弁護士も加わった分限懲戒審査委で審議する」などと書かれていた。
医師の診断書も無視される
AさんとBさんが所属する職場の部長はその後、パワハラの目撃調査として部内でアンケートや聴き取り調査を実施。相談窓口の幹部は「(パワハラ)課長に話をするときは1回メールで連絡する」と言っていたものの、反故にされた。課長に告発が知られたことでAさんは、課長の声が聞こえるだけで手が震えるほどのストレス状態となり、いったん有給休暇を申請する。
「切実な思いで相談したのに対応はいい加減で職場環境は変わらない。人を大切にしない組織にはいたくない」。休暇中にAさんは悩んだ末、世田谷区役所に見切りをつけて7月1日付での退職を決意する。退職前の6月上旬、加害者の課長はAさんがいない職場で「(Aさんの再就職先に)オレが行って驚かせてやろうか」と告発への報復とも取れる言葉を発していた。
Aさんは結局、在職中に総務部によるヒアリングを受けることはなかった。この事実を退職後に区のホームページの「区長へのメール(区政へのご意見)」に訴えたところ、総務課長と人事課長から即座に連絡があり、「事情聴取まで進められなかった。現在準備中」との回答だった。
Aさんは言う。「区長宛にメールしなければ、総務部から私へのヒアリングは実現しなかった。私の問いに対して『(部長による調査で)関係者から事実確認ができたから実施するつもりはなかった』と答えていましたから。被害者の声を直接聞こうとしないのですから、パワハラ調査に本気で取り組む気があったとは思えないし、『ハラスメント防止』の掛け声も有名無実です」。
一方のBさんも強いストレスから休職に追い込まれた。5月に職場復帰する際には、「ストレス因となった職員とは距離を取るなどの配慮が必要」との医師の診断書を提出したものの、無視された。

