取材で原作者の海野つなみが「どちらがクロエでもエマでもあり得ると思った」と話していたのも、うなずける気がします。エマにもクロエにもなれる。そう言わしめるほど、この2人は役に溶け込み、俳優の顔が出すぎない。
物語の構造も、この作品らしい捻りがあります。占いの店に訪れる相談者の悩みは、必ずしも解決しません。解決しなくても、エピソードは終わります。そのかわりに毎回登場するのが、パフェです。クロエが経営する純喫茶「パリ」の2代目マスター・シモン(岩瀬洋志)が作る本格パフェを、エマとクロエが実に美味しそうに食べる。それがドラマの締めくくりです。
多部はこう話していました。
「この物語は特に正解を導くものではありません。こういう考えの人もいる、じゃあパフェ食べよう。人生いろいろあるよね、私もいろいろあった、じゃあパフェ食べよう。そんな風に答えを求めずに、自分たちがどう生きていったら自分が納得する毎日を過ごせるのかっていうことを、ぼんやり考えるドラマだなって思っています」
その言葉が、この作品の空気をそのまま言い表しています。
誰もが「俳優・多部未華子」を更新するかも?
「逃げ恥」ほどの社会現象になる気配は、今のところありません。間口は広くないからです。答えを求めて見始めると、肩透かしを食らうかもしれません。ただ、刺さる人には深く刺さる良作です。
そしてこの作品を見終えたとき、多部未華子という俳優の「今」を、おそらく誰もが少し更新することになります。30代後半を迎えた多部が、てらいなく役と向き合う。それが彼女の強さです。あの黒いドレス姿を思い出しながら、改めて確信しました。

