人的資本投資・経営への注目が高まっている。深刻な人手不足を背景に、「人材育成」は企業にとって重要な経営課題だ。手厚い教育・研修制度の有無は、就活生にとっても企業選びの重要な指標として注目されている。では実際に企業は社員教育にどの程度の金額をかけているのか。
今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2026年版に掲載されている「従業員1人当たりの年間教育研修費用」を基に、上位100社のランキングを作成した。なお『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』26年版には同ランキング上位300位まで掲載している。
対象は24年度の同金額を開示している682社。企業によって教育研修費の定義が異なる場合がある。参考として「従業員1人当たりの年間教育研修時間」も掲載している。
トップの伊藤忠商事は60.6万円
1位は伊藤忠商事の60.6万円。同社は簿記2・3級、FASS検定(経理・財務スキル検定)、ビジネス実務法務検定など資格・技能検定の取得奨励制度、海外留学制度、人材アセスメント制度を導入し、社員のやる気を高める工夫をしている。24年度は研修センターとして寮費用の一部を投資額に含めたため費用が増加している。大手商社は本ランキング上位の常連。商社は4位に三井物産(教育研修費用は58万円、以下同)、5位に三菱商事(57.7万円)、12位に丸紅(31.1万円)、16位に住友商事(28.7万円)が続く。
2位は産業ガス大手のエア・ウォーター(60万円)。新入社員向け海外研修に力を入れている。24年度は新入社員研修の期間増加、年代別キャリア研修の実施により大幅に増加したという。3位はANAホールディングス(59.8万円)。資格・技能検定の取得奨励、国内・海外留学制度のほか、海外実務研修制度、海外現地雇用者の日本への異動を支援するグローバルストレッチトレーニング制度、サバティカル休職制度など社員のやる気を高める制度を複数導入している。
業種別では情報・通信業の会社数が最も多い。10位に日鉄ソリューションズ(32万円)、17位にSCSK(28.3万円)、23位にNTTドコモビジネス(26.4万円)、26位に日立ソリューションズ(25.7万円)、28位に伊藤忠テクノソリューションズ(24.8万円)、29位に日立システムズ(24.4万円)などがある。
全体の平均は約8万円と前年の約7.3万円から上昇した。上位企業は教育研修費用に多くのお金をかけていることがわかる。各社とも専門性が高い人材の育成、リカレント教育、グローバル人材の育成、広範なテーマを扱うeラーニングなどに力を入れている。今後はAIに対応するための教育にお金をかける会社が増えることが予想される。
一方で教育研修費の範囲や定義については、議論の余地がある。企業によって社員教育に必要な内容が異なるうえ、どこまで対象に含めるかも検討する必要がある。ITなどを活用して効率的に施策を展開している場合は、教育研修費が少なくても費用対効果は高いといえる。今後は研修時間との兼ね合いや費用対効果などを精査する必要が出てくるだろう。


