2026年3月末、アメリカは地上作戦を準備し、ホルムズ海峡近くにアメリカ海軍の船舶を派遣した。しかしイランの強力なミサイルによって侵攻できず、膠着状態に至る。その苦肉の策が停戦合意であったともいえる。
発表された14項目の覚書は、ある意味アメリカにとって戦後賠償を含む、敗北を意味する条件を含んでいた。その意味で、まずアメリカ議会での合意がとれるかどうかという不安が残った。しかも、イスラエルのレバノンの領土と主権を尊重するということが書かれてあったことで、イスラエルの了解が必要であった。イスラエルはこれに納得していない。
今回の戦争の驚くベき事実は、イランの強靱さであった。アメリカはイランをアリ・ハメネイによる保守的イスラム・イデオロギーの政体だと考え、彼を暗殺することで体制は崩壊するだろうと考えていたようだが、実際はそうならなかった。
アメリカの攻撃に耐えきったイランの新世代
ジョンズ・ホプキンス大学のナルゲス・バヨグリ(Narges Bajoghli)とヴァリ・ナスル(Vali Nasr)の論文「イランの新しいグランド戦略」『フォーリン・アフェアーズ』(2026年7-8月号)(Iran’s New Grand Strategy, Foreign Affairs, July/August,2026)という論文は、こう述べている。
イラン体制はアヤトラ・ホメイニの独裁体制といわれているが、実際に支えているのは、1979年のイスラム革命以後育った次の世代であり、彼らはイデオロギー的ではなく、きわめて官僚的、テクノクラート的であり合理的人々である。この世代は、イスラム体制形成以後に生まれ育った新しい世代で、革命時代にあったイデオロギー的世代ではなく、国家体制を合理的に運営していくプラグマティックな世代である。
また、イランの新しい世代をこう特徴づけている。
この新しい世代は2025年6月の「12日戦争」を通じて、アメリカとイスラエルが戦争を仕掛けてくるだろうということを予測して準備していたというのだ。首都機能を地方に分散し、戦争が起こることを予測していた。だからこそ、アリ・ハメネイが亡くなった後、新しい世代を代表する息子のモジタバ・ハメネイがスムーズに政権を継いだというのだ。
こうして国家組織を単独の独裁者ではなく、複数の官僚が管理することで分散し、イラン体制はトップの暗殺やテヘランへの攻撃があっても柔軟に対応できるようになったというのである。

