さらに東京都は工科高校の生徒に対し、工業系分野の資格取得にかかった費用の最大半額を補助。ガス溶接技能講習、3級自動車整備士や危険物取扱者、2級建築士、大工技能検定、ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者、電気工事士、第三種電気主任技術者など、約150種の資格が対象となっている。
「工科高校は実技を伴う実習が多く設置されているため、普通科と比べて教員数が多く、生徒と関わる大人が多いとも言えます。教員は生徒との信頼関係を構築したうえで、作業上の注意や技術的な指導を行うことが必要ですから、その点に気を付けながら生徒を細やかに観察し、適切に指導を行っています」(山本氏)
工科高校への求人増でも根強い普通科志向
こうして注目されている都立工科高校だが、目下の課題は、入試の応募人数と応募倍率の低下だ。応募倍率は20年度に1.0倍を切り、25年度は0.7倍となっている。

工科高校の応募倍率の低下の背景を、東京都はどう捉えるのか。東京都教育庁都立高校改革推進担当課長の中條堅一郎氏はこう話す。
「都立工科高校に対し、『卒業したらすぐに就職』というイメージをお持ちの保護者の方も多いようです。生徒さんも保護者の方も、『3年間で手に職をつけられるのはわかるけど、高校を卒業してすぐ就職というイメージが湧かない』『とりあえず普通科に行ったほうが、選択肢が広がるのでは』と考えるようです」
加えて、保護者世代には、1980年代にヒットした学園ドラマや映画で、工業高校が荒れた学校の舞台として描かれたイメージが根強いようだ。工科高校に対しては、世間のイメージとは異なる部分が多いと中條氏は指摘する。
「工科高校生の卒業後の進路は就職だけではありません。現在、大まかに都立工科高校15校で就職する生徒さんは6割強ですが、専門学校への進学が20%、大学進学が15%となっています。学校によって違いはありますが、大学の指定校推薦枠がある工科高校もあります」
将来の選択肢が広がると考え、とりあえず「普通科へ」と考える保護者も多いようだ。一方、都立工科高校を選ぶ生徒の中には、やりたいことがはっきりしている生徒も多いという。
「大工さんになりたくて建築科へ進んだり、自動車が好きでもっと知りたくて自動車科を選んだり、興味のあることをもっと学びたいという生徒さんは多いようです。入学後、端材でおみこしを作り上げて技能五輪の全国大会で優秀な成績を収めた生徒さん、高校生ものづくりコンテスト全国大会で入賞した生徒さんもいます」
東京都は、都立工科高校の志願者増を目指して「都立工科高校ドリーム・フェスタ」を開催している。都立工科高校が一堂に会し、各校の特色紹介や、生徒による技術の実演などを行っている。25年は5000人が来場したというが、26年も8月2日に開催が予定されている。
「工科高校のPRイベントであるドリーム・フェスタの来場者にアンケートを取ったところ、約7割の方から『工科高校がこういうことをやっているとは知らなかった』という答えが返ってきました。また、『ドローンやAI、ロボットなど、最先端の学びをしていることに驚いた』というお話もよくうかがいます。生徒さんや保護者の方に『工科高校もいいね』と思っていただけるよう、工科高校の魅力を発信していきたいと考えています」(中條氏)
AIの進化によって社会や産業のあり方が急速に変化する。求められる人材や技術・知識も大きく変わろうとする社会で、都立工科高校の注目度は、今後さらに高まっていくと言えるだろう。



