「相談に来てくれるだけ、まだいいんです」(出口さん)
春に新しい環境に適応しようとするのは、ベテラン社員も同じだ。六月病は若手だけの問題ではない。
40代、50代の六月病の原因は
より深刻化しやすいのは40、50代だと出口さんは感じている。4月に昇格や管理職就任を経験したベテラン社員。部下のマネジメントなど、新しい能力が求められる。
5月は部下の変化に気を配る一方で、自分の不調には目が向かない。ベテラン社員からの相談がようやく出はじめるのが6月だと出口さんは言う。
なぜか。職場で重圧を感じていても、数々の修羅場を切り抜けてきた人ほど、「昔はもっと大変だった」「これくらいで自分は潰れない」と思って、不調を見過ごしてしまう。その結果、出社できなくなるほど追い詰められて、初めて異変に気づくケースも少なくないという。
「管理職の自分は相談を受ける立場だ」という意識が強い人もいる。若手より相談が遅れやすいぶん、症状も深刻化しやすいという。
不調に早く気付ける人には共通点がある。周りに気軽に話せる人がいることだ。
「私は大丈夫なんですけど、周りに元気がないと言われたので」と念のために相談に訪れる人もいる。だが、よく話を聞くと、実は倒れる寸前の状態で、すぐに休職に入ることも少なくないという。周囲の何気ない一言が、自分が気づかない異変のサインになることもある。
六月病は、仕事から離れると症状が改善する人も多いが、「休んだら降格させられるかもしれない」という不安から休職をためらう人もいるという。
「人事担当者が、休んでも同じポジションに戻れると示すことが大切です。もし同じ環境に戻ることが難しいなら、本人の同意のもとで、役職を外れたり業務を軽減したりする選択肢があることも、精神的な安心につながります」(出口さん)
出口さんは、食事や睡眠、余暇の過ごし方に、普段の生活の変化が表れていないか注意してほしいと話す。いつもとは違う感覚が2週間以上続いている場合は注意が必要だと話す。趣味を楽しめなくなったり、休日まで仕事のことばかり考えたりする状態も危険信号だ。
六月病は、頑張ろうとしている人ほど気づきにくい不調なのかもしれない。
(AERA編集部・井上有紀子)

