見落とされがちな点だが、社会には中高年男性向けの独自のスキーマが存在する。「落ち着いた風格」「誠実さ」「生活感」といった要素がそれにあたる。
ファッション研究者のアンナ・サドコフスカ氏らが指摘するように、中高年男性は服装を通じて「自分らしさ」「社会的な役割」「年齢にふさわしいアイデンティティ」を表現しようとしており、それは若者の服装規範とは本質的に異なる目的を持っている(※3)。
否定された“イオンモールおじさん”の服装は、「家族のために機能性を優先した、ライフステージに応じた合理的な選択」でもある。「若者スキーマに合わせろ」という批判は、この中高年固有のスキーマの存在をまったく無視している。
さらに、ジェンダーの非対称性という問題もある。SNSやネットニュースのコメント欄では、「おばさんの服装をいじったらアウトなのに」という指摘も多く見られる。この非対称性も、一連の論争の重要な側面だ。
「脳処理に負荷のかからない」ファッションが正解のワケ
では実際に、何を着ればいいのか。
ファッションの専門家たちは、この問題に対してさまざまな解決策を提示している。スタイリストの森井良行氏は「東洋経済オンライン」で、「色数・フォルム・生地感の3つをアップデートせよ」とすすめていた(※4)。
セレクトショップのバイヤーたちは口を揃えて「サイズ・素材・シルエットを整えよ」と言う。ファッションメディアは「色数を4色以内に抑えよ」と提案する。
これらのアドバイスはすべて1つの共通原理からくるものだ。それが「視覚処理の流暢性(Processing Fluency)」である。

