トウィッグ氏は「服装が慣習に沿って着用されている場合はあまり注目されないが、慣習外に使用されると反応を引き起こす」とも述べている(※1)。このスキーマの不一致が、若い世代に「なんかダサい」という瞬時の反応をもたらすのだ。
「若者スキーマに合わせれば解決」ではない
しかし、問題はこれだけで終わらない。仮に中高年男性が若い世代のスキーマに合わせて服装をアップデートしたとしても、それだけで解決できるとは言えないだろう。ここに、この論争の本質的な複雑さがある。
同じ服でも、着用者の体型によって見え方は大きく変わる。加齢とともに体型・骨格が変化するのは自然なことであり、それに応じて服の見え方も変わってくる。
現在の若者ファッションのトレンドであるオーバーサイズシルエットは、もともとスリムな若者の体型を前提に設計されている。加齢とともに体型が変化した中高年男性が同じシルエットを選んでも、デザイナーが意図した「こなれた雰囲気」にはならない場合が多い。
実際、ネットニュースのコメント欄には、《中年オヤジがオーバーサイズを着るのは体型に合わずアンバランスになると思います。若い子ですら姿勢が悪いと着こなしている様に見えません》という指摘も見られた。
服装の印象は、着用者の顔との組み合わせによって決まる。
服装心理学者のニール・へスター氏らは「服装が個人に与える印象は、それ単体では理解できない。同じジーンズでも、それと一緒に着るもの、着ている人(顔や体型)、着る場所や時代によって、まったく異なる印象をもたらす」と論じている(※2)。
若者向けのカジュアルウェアは、若々しい顔つきとセットで成立するようにデザインされていることが多い。加齢によって肌質・輪郭・目元が変化した中高年男性の顔に同じスタイルを合わせると、意図とは異なる印象が生まれることがある。若者スキーマをそのまま移植することの限界がここにある。

