特筆すべきは、その寛容さだ。ここは「食堂」でありながら、駅の「待合室」としての機能も兼ねている。注文をせずにすわっているだけでもいいし、なんと店外からの飲食物を持ち込んでも問題ないのだという。スタッフは、アジアからの留学生や障がいのある人々、健常者が共に働いている。
店の壁には、1980年までこの地を走っていた「能美電(北陸鉄道能美線)」の時刻表や路線図、当時の写真が飾られている。ここは、能美電の終点・新寺井駅が隣接する乗換駅だったのだ。耳を澄ませば、BGMにも80sソング。かつての鉄道の記憶が、現代のコミュニティをつなぐ触媒となっているのだ。
能美電の引退車両が無人ストアとして復活
駅前広場では、1951年製造の旧能美線車両「モハ3761」が保存……、と思いきや、無人のミニコンビニ「のみ電スマートストア」となって第二の人生を歩み始めていた。
車内奥の店舗エリアへは、顔認証を登録するとゲートがオープン。精算はセルフレジによるキャッシュレス決済で行うことで、無人販売が可能になっている。お菓子やカップ麺、トイレットペーパーといった日用品、さらには土産物まで並んでいる。駅周辺にスーパーマーケットやコンビニがないため、近隣住民にとっても貴重な買い物拠点だ。
車両の入り口側には往時のロングシートが残されていて、休憩スペースになっている。昔の車両の再生といい、包摂性のある食堂に集う、スタッフもお客さんの多様性といい、どこからこのような発想が生まれてくるのだろうか。佛子園理事の岸本貴之さんに聞いた。
「佛子園が駅の清掃や店舗の運営などを任されるのは、初めてではありません」
佛子園理事の岸本貴之さんがそう語るように、同法人の鉄道駅を拠点とした活動は10年以上の歴史を持つ。その原点となったのは、2012年から指定管理を受けている美川駅(当時はJR北陸本線)だ。

