まちを歩くと数多くの住宅が目に入る。「広大な住宅地」と聞いて、同じような住宅風景が続くのではと思ったが、まち全体は決して単調には見えない。それはなぜか。
松田さんに聞くと、少し意外な答えが返ってきた。
実は、単調に見えやすい「総2階」の住宅が多いのだが…
「住宅は総2階を基本につくっています。総2階というと単調でつまらないと思われるかもしれませんが、道路が曲線を描いているため表情が変わり、変化に富んだまちなみになるんですよ。そういうことも踏まえて建物を計画しました」
総2階とは、1階と2階の外周がほぼそろった住宅のことだ。構造や施工の面では合理的だが、外観は単調に見えやすい。コモアしおつでは、曲線の道路や豊かな緑と組み合わさって、まちなみに変化が生まれている。
屋根を見ると、周囲の山並みを背景に、勾配屋根が連なっている。小学校やコモア・ブリッジの建物にも傾斜が用いられ、まち全体にさりげない一体感がある。
宅地の形にも工夫がある。道路が敷地の南側にある「南入り宅地」と、北側にある「北入り宅地」では、日当たりや玄関まわりの印象が変わる。そこで、南入り宅地は明るい前庭を生かせるよう東西に広く取り、北入り宅地は南北方向に奥行きを持たせ、敷地の奥まで日差しが届くように計画された。外壁を道路から後退させ、植栽を入れる余白も確保している。
同じ区画を機械的に並べるのではなく、敷地条件に応じて配置する。そんな工夫も景観に変化をもたらす。
都心の住宅では得にくい「ゆとり」
通りに目を向けると、庭木や花、外構の連なりもまちなみをつくっていることがわかる。緑豊かな風景は、年月を経て植物が育っただけでなく、販売時から植栽や外構までつくり込んだからこそ、今に生きている。
「山を崩した分譲地で、一度自然を壊してしまった。だから、その自然を再生しなくちゃいけない、という気持ちがあったのだと思います。ですから、植栽や外構にしても、つくり込みはしっかりとしているんです。それがそのまま引き継がれて、現在の緑あふれる住宅地になっています」
住宅は敷地約70坪、建物約45坪の4LDKを基本に計画された。総2階を成立させるため、2階には子ども部屋に加えて書斎や物置なども設けられ、駐車場も2台分を確保した。都心部の住宅では得にくいゆとりが、住まいの内外に備わっていた。

