もっと重要なことに、「スペースXバブル崩壊ショック」で、個人投資家たちのセンチメント(心理状態)は大いに傷つく。いったん傷ついたセンチメントは戻ってこない。これが個人投資家に関する、最も重要な経験則(観察している側の)だ。
財務的にも、センチメント的にも、ともに傷つき、個人投資家のバブル買いは戻ってこない。そうなれば、プロのトレーダーたちは、これを利用して儲けるしかないから、とことん売って、個人投資家の傷ついたセンチメントを利用して、暴落オーバーシュートを狙い、仕掛けてくる。ここで乱高下でも揺さぶられ、多くの個人投資家は、スペースXバブルの高値づかみ、投げ売りに加え、そのほかのAI株、半導体株までも投げ売りし、往復ビンタ的にむしり取られるだろう。そして、AIバブル、半導体バブルは徹底的に終わる。これが今年夏以降の出来事となるだろう。
バブルが終わり、そして全面的な不況がやって来る
では、ついに、AI、半導体以外のセクター(業種)の出番が来るのか?バリュー株(本来の価値に比べて、株価が割安になっている株)の時代となるのか?
そうではない。部分的なセクターバブルは、そのセクターにとどまらない。株価の暴騰が少数のセクターに限られていたとしても、これだけ壮大に部分的にバブルになれば、ほぼすべての投資家が、殺到しているはずだ。だからとことんバブルになったわけだが、ここが崩れれば、ほかの銘柄が崩れていなくても、ほぼすべての投資家のセンチメントが崩れていれば、彼らは、どんな銘柄に対しても、アグレッシブな買い意欲は残っていない。すべてのリスク資産は売り方向で考えることになる。含み益が出ているうちに売っておこう、ということになる。
したがって、株式は全面的にバブルが終わり、金も銀も、すべての貴金属価格の上昇も終わり、もちろん暗号資産も終わる。不動産にも波及するだろう。リスク資産市場は全面的にバブルが終わるのである。
こうなると、不思議に力強かった実体経済も不況に突っ込むことになる。「K字型経済」、あるいは、キャピタルゲインの「スピルオーバー(波及)消費経済」は終わる。そうなれば、スタグフレーション(景気停滞下での物価上昇)経済だけが残り、全面的な不況となる。政府の財政出動や中央銀行の金融緩和の余力もなく、また金融システム不安ではないから、税金投入も難しい。またプライべートクレジット市場は崩壊し、損失は出るが、金融システム不安までにはならない。ただ、資金の出し手がすべてのチャネルで収縮し、ハイパースケーラーの資金調達は難しくなる。こうなると、サプライサイドから景気を刺激していた、AI投資景気も終わる。大不況になるだろう。
これらを見越して、アンソロピック、オープンAIというAI勢のIPO(新規株式公開)だけでなく、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、そのほかの超大企業も、大型資金調達へ殺到している。しかし、これらの行動は各企業のニーズは満たすが、マーケット全体では、資金調達が、今後一斉に困難になり、AI・半導体、テクノロジー全体の産業全体の資金調達を難しくし、自らの首を絞めることになるだろう。これが今年後半起きることである。そして、投資資金に不足するどころか、弱い企業においては、資金繰りにも詰まるところが出てきて、不況を加速することになるだろう。
さらに悪いことに、イラン情勢は依然収束せず、原油市場の沈静化もまったく期待できない。最悪のシナリオは、ドナルド・トランプ大統領が我慢できず、戦況が悪化・激化し、膠着どころか、後戻りできなくなることだ。そして、11月3日の中間選挙の恐怖がトランプ政権を包みこみ、11月3日というトランプ政権崩壊のXデーが近づくにつれ、破れかぶれの滅茶苦茶の政策が次々打ち出され、アメリカ政治も経済も外交も、世界的な地政学も、さらに悪化するだろう。これは確実に起きるシナリオだ。ファンダメンタルズ(経済などの基礎的条件)からも、株式市場、リスク資産市場の暴落は加速するのである。
一筋の光明は、どこにも存在しない。
追記6月12日(午前):
トランプ大統領は11日、自ら宣言した同日夜のイランへの攻撃を中止したとSNSで表
明し、さらに、「署名の時間と場所はすぐに発表される」と投稿し、イスラエルやサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、トルコなどの国名を挙げ、「関係者全員によって承認されている」と強調した。
その後、ホワイトハウスで「この数日で決着がつくはずだ」と記者団に語った。週末にも欧州で合意文書に署名する可能性があるとの見通しを示した。その場合には、J・D・バンス副大統領らが出席して署名する予定だと説明した。これを受けて、11日のNYダウ30種平均株価もナスダック総合指数も急騰。日経平均先物も大きく上昇した。これらを見て、心配した編集者が12日朝「イラン情勢など、最後のところで追記できますよ」と連絡をくれた。
心配には及ばない。私の予想はいつも外れるが、それよりも遥かに多くの回数で、トランプ大統領の「もうすぐ」は外れている。外れているというより、あちらは嘘だから確実に逆を取れば(つまり、戦争は継続すると予想する)100%当たっているともいえる。CNN記者が数えたところによると、トランプ大統領はこれまで合意が近いと少なくとも38回以上直接言及していて、この話は各種メディアでも報道されている。
もちろん、わが編集者はこれを知っているし、合意が本当に近いとも思っていないのだが、この世で、1つのグループだけがこれを真に受けている。彼らは株式市場関係者と呼ばれる人々で、この38回、毎回株価を上げるネタに使ってきた。まあ信じているふりをしているだけで、利用しているだけだ。だから、12日の日経平均は大幅に上昇となっている。
今後、また数日以内に、何の合意もないことがはっきりするだろう。連日爆撃をしておいて、いきなり一方的に停戦が近いと言って、誰も信じないし、イランもカタールも、ますますトランプ大統領とアメリカ不信を強め、停戦はさらに遠くなる。トランプ大統領の停戦直前という言葉を、段々と誰も信じにくくなってきたから、トランプ大統領も、嘘を詳細に具体的に言うようになってきたのだ。
しかし、株式市場は、嘘だったという事実は無視して、上げた分を下げることはしない。だから株価は、この1カ月半、上がり続けている。要は、トランプ大統領もイランも関係ない。AIバブル崩壊は、すべてスペースXバブルがいつ崩壊するかにかかっているのだ。
(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレース予想や競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承ください)。
