東洋経済オンラインとは
ライフ #だから、ひとり暮らし

「何もかもが空っぽで虚無の日々だった」——9歳年下の妻に先立たれた54歳男性の「ひとり暮らし」、少しずつ前へ

9分で読める
テリー植田さん
亡き妻と過ごした家でひとり暮らしをしているテリー植田さんを取材しました(撮影:今井康一)
  • 蜂谷 智子 ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰
2/6 PAGES
3/6 PAGES

久米川は派手な街ではない。駅前には昔ながらの商店街や飲み屋街があり、夕方になると常連客たちが暖簾をくぐる。顔見知り同士が声をかけ合う、どこか昭和の空気を残した街だ。

「実は志村けんさんの大ファンなんです。いつか彼の出身地である東村山に住みたいと思っていて。なかでも久米川は飲み屋街が面白いんですよ。歩いていると誰かに会うし、知らない店に入っても誰かと話せる。そういう距離感が好きなんです」

植田さんは、もともと好奇心の赴くままに生きてきた人だ。イベントプロデューサーとして数々の企画を手掛ける一方、「ソーメン二郎」としてそうめん文化の普及活動も行い、文教大学の外部講師として教壇に立ち講義やゼミを行うこともある。面白そうなことがあれば迷わず飛び込んできた。

そんな植田さんの人生に、美智子さんが現れたのは2000年代半ばのことだった。植田さんがプロデュースしていたイベントに、アルバイトスタッフとして参加したのが最初の出会い。初日の夜には飲みに誘い、「家賃はいらないからルームシェアしよう」と持ちかけたという。

「今思うとむちゃくちゃですよね(笑)」

ところが美智子さんも「いいですよ」と応じた。こうして始まった同居生活は、やがて結婚へとつながっていく。

見つかったときにはすでに手遅れ——卵巣がんの怖さ

秋田県横手市出身の美智子さんは、長年出版関係の仕事についていたが、歌がうまく、地元のスナックで働いて人気者に。夫婦で久米川の飲み屋街を飲み歩く日々だった。

妻の美智子さんは9歳年下。「結婚できて、本当によかったと思っています」(撮影:今井康一)

パートナーの美智子さんに異変が起きたのは2023年だった。

「24年の11月に亡くなるまで、1年ぐらいの闘病生活でした。ある時腰の激痛を訴えて救急搬送されました。卵巣がんの疑いありという形で、立てなくなって救急車で運ばれたんです。そしたらもう即入院っていう話で。卵巣がんのステージ4でした。

ドクターに聞いたら、卵巣がんは早期発見が難しい病気だそうです。症状が出ないなかで、見つかった時にはもう手遅れということも多い。妻も同様で、告知は寝耳に水でした。40代前半だと、体の不調をあまり深刻に考えないことも多いですし」

4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象