ここまで読んでいただいて、気づいた方もおられると思います。クロマグロを逃がすことに疑問を持つなどといった状況ではありません。日本の水産資源管理制度の不備で、水産業が崩壊する一歩手前にきているのです。そして資源が減って魚が獲れなくなると、漁業者だけでなく消費者も、供給不足により、価値の低い魚を高値で買わないと魚が食べられない状態になってしまいます。
漁獲量の不足を補ってきた輸入水産物は、数量で前年比3.4%減の208万トン、一方で金額は3.8%増の2兆1454億円となっています。世界の水産物需要は、人口増加を背景に今後さらに増加します。かつてのように、日本の都合で必要な分の水産物を日本が輸入できるようなことはありません。逆に年々輸入量は減少し、輸入単価は上昇していきます。日本の水産資源を回復させるのは待ったなしなのです。
ノルウェーは20年かけてニシンを回復させた
1960〜1970年ごろ、ノルウェーでクロマグロが激減することがありました。その時は、クロマグロを乱獲してしまっただけでなく、そのエサとなるニシンも乱獲で資源をつぶしてしまいました。現在では、そのニシン資源(ノルウェー沿岸で春産卵する最も大きなニシン資源)もクロマグロも資源管理により回復していますが、ニシン資源の回復には約20年もの年月がかかっています。
ノルウェーの上記の例は、生態系を守ることの大切さを示しています。日本では資源管理制度の不備のため、生態系が壊れてしまっています。クロマグロの資源は、国際合意による国・地域別の漁獲枠の割り当てのおかげで回復しています。しかしながら、その他の魚種では数量管理による資源管理が機能していないので、クロマグロばかりが増え、しかも漁獲枠が足りないので逃がさざるを得ない、といったことによる不満が募っています。
もっと早くから魚種ごとの資源管理を徹底しておけば、こんなことにはならなかったのです。漁獲枠が増えないことがわかっていれば、定置網などでも、枠に達した魚種をできるだけ獲らない工夫や、混獲を減らす工夫もできていたはずです。
しかし、世界の成功例に目を向けず、長年にわたり数量管理を重視してこなかった。その結果、定置網に入ったクロマグロを逃がすという漁業関係者の負担が大きくなり、社会にも「なぜ逃がさなくてはならないのか?」という疑問が広がりました。世界の常識と日本の受け止めにズレが生じているのです。
漁獲枠が満了したら、もっと獲らせてほしいということではなく、ピシッとやめて、来年以降に、その時獲らなかった魚や、それらの魚が卵を産み、生まれて大きくなった魚を将来獲って、持続的に漁業を継続できるようにすればよいのです。
そうすることによって、漁業者と消費者だけでなく、その間にいるすべてのステークホルダーにとって、魚の資源を中心とした豊かな社会ができあがっていくのです。
かつて魚の資源が豊かで栄えていた日本各地のように。

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