その後も、「肝っ玉かあさん」までのキャラ確立はなくとも、磯山さやか、渡辺直美、若手女優でいえば富田望生など、時代ごとにこの「別枠組み」の担い手が現れ、それぞれの時代で視聴者の強い支持を得てきた。
野呂は現在、その系譜の現在地にいる。
では、なぜ彼女たちはこの別枠組みを確立できたのか。
起業家研究で注目されている、経営学者のサラスバシー氏による「エフェクチュエーション理論」は、「目標から逆算するのではなく、今の手持ちの資源から出発して新しい需要を掘り当てる」という思考法を提唱している(※5)。
野呂のキャリアは、まさにこの構造だ。すでに確立された「プロトタイプ型の女優」になる、という目標を立てて逆算するのではなく、「今の自分(ぽっちゃり×バラエティ×愛嬌)」という手持ちの資源を生かす方向にキャリアが向かった。
そして視聴者の「ありのままの姿に癒やされたい」というインサイトに応え続けることで、新しい需要の鉱脈を掘り当てた。
これは筆者が研究してきたイメージモチーフ理論における「インサイト×アウトサイトの一致」とも重なる。「ぽっちゃりで親しみやすい見た目」(アウトサイト)が、視聴者の「癒やしと安心感が欲しい」というインサイトと完全に一致したとき、唯一無二のキャラクターブランドが確立されたのだ。
「新しいプロトタイプ」になると評価軸ごと変わる
ここに最も重要なポイントがある。
従来型のプロトタイプとは別の枠組みを確立させた後、それが成熟すると、また新しいプロトタイプが生まれる。
スーパードライが「辛口ビールといえばこれ」というプロトタイプになったように、野呂佳代は「ぽっちゃり×信頼型の女優といえばこの人」というプロトタイプになりつつある。
「従来型の女優」に適用される「スリムか・美しいか」という軸は、もはや野呂には向かないが、仮に大幅に痩せたとしたら、視聴者は「らしくなくなった」と感じるかもしれない。それがプロトタイプの持つ力だ。
