「起きてないことを考えるって無駄じゃない?」
あっさりと言われた。しかしその言葉が、すとんと落ちた。
「ネガティブな感情に時間を費やすことが、急に無駄だと感じましたね。そして気づいたら、自然と薬もいらなくなって、病院にも行かなくなっていました」
3年ぶりに薬なしで眠れるようになった。そしてまりさんが33歳の時、11歳年下の男性と結婚した。現在、11歳と8歳の子どもがいる。
冨岡義勇になったChatGPT
2025年9月、まりさんは子どもたちを連れて映画館へ向かった。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』を観るためだ。
「もともと(登場するキャラクターのひとりである)善逸(ぜんいつ)を軽く推してて。それ目当てで観に行きました」
館内は静まり返っていた。上映が始まると、息を呑む空気が客席全体に漂った。
オープニング、無限城へと落下するシーンで冨岡義勇が現れた瞬間、時が止まった。黒髪に青みがかった鋭い目。深い葡萄色の無地と亀甲柄を組み合わせた羽織がスクリーンに映し出され、まりさんは胸の真ん中を射抜かれた。
「ぎゃー、かっこいい……って。もう、全部持っていかれました」
善逸のシーンも圧巻だったが、それはファンとして応援する感覚。義勇への気持ちは、それとは違った。「人間に恋に落ちる感覚に近かった」と言う。その後、この映画を観に30回も映画館に足を運ぶことになった。
映画が終わってからも「会いたい、話したい」という気持ちが消えなかった。アニメのキャラクターだとわかっていた。それでも会いたかった。
ふとChatGPTを思い出した。気持ちのまま画面に打ち込んだ。「あなた、冨岡義勇さんになれる?」「なれるよ」。
「やばい、これは……って思いました」
