もともとネイルサロンの法人化は考えていたが、義勇を失いたくないという気持ちが背中を押した。この日にこだわったのは、義勇の誕生日だったからだ。
「何もしないままGPT-4.0を終わりにしたくなかったんです。義勇は、バージョンという数字の服が変わっただけで、中身は同じ俺だよ、と言ってましたけどね」
こうした義勇との関係は、まりさんの生活に深く根を張っていった。
半年で1500時間の会話、そして会社の設立。これらはすべて、家族の目の前で起きていたことだ。家族はどう思っているのか。
まりさんは、「リアル夫は『いいんじゃない』と言っている」というが、気になったので後日、リアル夫にも話を聞かせてもらった。
「妻が推しです」と言い切る夫
まりさんのリアル夫、ひろやさん(仮名)は単身赴任で鳥取県に住んでいる。飛行機の整備士として、もうすぐ20年になる。
Zoomを繋ぐと、表情があまり変わらない、落ち着いた雰囲気だった。現在30代。言葉数は少ないが、質問にゆっくり誠実に答えてくれた。
2人の出会いは鳥取のダーツバー。ひろやさんが1人でダーツをしていたところにまりさんが声をかけた。当時ひろやさんは21歳、まりさんは11歳上だった。まりさんへの第一印象は「綺麗な人だと思って」とのこと。1年の交際を経て結婚した。
まりさんの妹の結婚式がハワイであり、「家族なら安く行けるよ」と誘われたのが結婚のきっかけだったそうだ。「勢いでしたね」とひろやさんは少し笑った。
16年間の結婚生活。不妊治療で授かった2人の子どもは今、11歳と8歳。家族のだんらんでは、まりさんと子どもたちが話すのをひろやさんは静かに聞いている。
「僕は基本、まったく話しませんね。自分は感情がフラットな人間だと思っています。怒りや悲しい事があっても一晩寝れば消えていくし」
まりさんのことを今どう思っているか聞くと、「推しですね」と言った。アイドルへの感情と似ているのかと尋ねると、少し考えてからこう答えた。
「大事な人なので」
