パワートレインは3.5リッターV6ガソリンエンジンと10速ATの組み合わせ。駆動方式は全車4WDで、リヤアクスルにトルクベクタリング機構を採用したホンダ独自のAWDシステムであるi-VTM4を搭載している。
このi-VTM4はパスポートのほか、パイロットやリッジラインなど、北米モデルに向けて開発されたシステムであるため、少し説明を加えておいたほうがいいだろう。パスポートに搭載されるのは許容トルクや応答速度を進化させた、第2世代の最新システムである。
i-VTM4は、フロントのトランスファーユニットおよびリヤのトルクベクタリング機構の働きにより、駆動力を前後ならびに左右後輪に最適配分するAWDシステムだ。
後輪に伝わるエンジントルクは最大で70%。それを受け取るリヤのトルクベクタリング機構は電動モーターで駆動する油圧ポンプを左右輪に各1個ずつ備え、横Gやヨーレートなどの情報から、左右それぞれのクラッチに伝わる油圧を調整。後輪に送られたトルクの最大100%を左右いずれかのタイヤに配分することも可能だ。
四輪すべてに駆動力を最適に配分できるため、雪道での発進や雨が降っているときのコーナリング、舗装路から急に道がぬかるみはじめたシチュエーションなど、どんな状況でもトラクションと操縦安定性を連続可変的に保つことができるところが、i-VTM4の強みである。
悪路走破性こそがパスポート最大の強み
また、リヤのトルクベクタリング機構はオンロードを走るときの軽快感にも大きく貢献する。
リヤアクスルはフロントより2.7%高い回転比を持つ設定で、コーナリング時は必要に応じて後輪側から押し出すようなヨーモーメントを発生。外側の後輪をより速く回転させる制御も加えてアンダーステアを低減し、俊敏かつ安定した旋回性能を実現する。
実際にアスファルト路面のワインディングにおける試乗を通しても、パスポートが決して忍耐を必要とする退屈なクルマでないことを確認することができた。もちろんある程度ロールすることを許容しながら、姿勢変化のリズムに乗り手が合わせてあげる必要はあるのだが、想像していた以上に機敏に曲がってくれるのだ。
加えて印象的だったのは、巨体を意識させない操作感の自然さだ。ステアリングはある程度の遊びはあるもののフロントタイヤの向きを素直に伝えてくるため、全幅2m超のSUVを操っている緊張感は走るほどに薄れていく。
3.5リッターV6も低回転から十分な余裕を感じさせ、アクセルを踏み込めば10速ATが滑らかにギヤを選びながら、大柄なボディを無理なく前へ押し出してくれる。もちろん電動モデルほどの瞬発力はないが、自然吸気エンジンらしいリニアな反応と、長距離を淡々と走り続けられる大らかさは、いかにも北米育ちのSUVだ。
日本にも導入される「TRAILSPORT ELITE」は、サスペンションにオフロード向けのチューニングが施されている。そのため、街中を普通に走るぶんにはなおさらフワフワした乗り心地で、標準装備のオールテレーンタイヤのゴツゴツ感が気になることも否めない。
だが、先にも述べたとおり、急に路面環境が変わったときの懐の深い対応力こそ、パスポートの魅力。ラフロードや砂が溜まって滑りやすくなった道でも常にキャビンが安定した乗り味を体感できたことで、ゲリラ豪雨や急な積雪といった自然災害に脆い日本の都市部でも頼り甲斐のある相棒になってくれるはずだという思いを強くした次第である。
