「『公立中は嫌でしょ?』って親に言われたんですけど、別に嫌じゃなかったんですよ。たぶん母親のほうが、田舎に飽き飽きしていた時期があったんだと思います」
息子の優秀さは、母親にとって、自身が抱える田舎暮らしの閉塞感を打ち破る切符でもあった。
魚の死骸を押し入れに保管…“変わった子”だった
頭脳明晰な少年だが、同時にかなり“変わった子”でもあったという。
小学1年生のころ、彼は近所の側溝で、まだわずかに息のある一匹の魚を見つける。「ドンコ」と呼ばれるハゼ科の淡水魚だ。打ち上がり、瀕死の状態だった。彼はその魚を持ち帰り、水を張った容器に浮かべ、最期を見届けた。
そこまでなら、生き物好きの子によくある話かもしれない。問題はその先だ。彼はその死骸を箱に入れ、押し入れの上にしまっておいた。
しばらく経って、家中に異臭が漂い始める。原因がわからない。何かが腐っているのは確かだが、見当もつかない。
「魚が死んだら臭くなるっていう発想がそんなになくて。あ、そっか、と」
中学校でサッカー部に入ってからは、部活前にお腹が空くと、裏山のセミやバッタを「おやつ」として生のまま食べた。
「最初に食べたセミは、バーベキューの流れみたいな感じでした。たまたまそこにいたから食べちゃおう、みたいな。そしたら美味しかったんですよ」
頭の良さと奇行の根っこはおそらく同じだった。普通の子が立ち止まる場所で立ち止まらない好奇心。やってしまったあとで、初めて世間との温度差に気づく感性。本ばかり読んでいた少年の内側で、知識欲と行動衝動は、いつも同じ方向を向いていた。
