星野さんは、「『シニアの居場所』とするのではなく、『なんだか楽しそうな場所』にすることで、誰もが足を運びやすくなる」とその狙いを説明する。実際、当初は様子をうかがっていた人も、じわじわと情報が広がったことで、足を運ぶようになってきている。
この日初めて訪れたという地元の90代の独居男性は、「普段は掃除をする時ぐらいしか外に出ないけれど、うわさを聞いて来てみた」と話した。
メイドたちは客と会話を楽しむが、話を聞いて必要を感じた場合は、星野さんが仲介役となって自治体の福祉サービスにつなげることもあるという。
あくまでも事業化をしないワケ
これだけ全国から客が訪れ、毎回賑わいを見せながら、「冥土喫茶しゃんぐりら」は事業化していない。その理由を横倉さんはこう語る。
「事業化してしまうと、利益を出そうという発想になるので、僕もメイドさんに厳しくなってしまうだろうし、メイドさんが楽しく過ごせなくなってしまうんですよ。それだと本末転倒なんです」
冥土喫茶は、客にとっての居場所であると同時に、メイドとして働くシニアにとっての居場所でもある。事業化して収益や効率を追えば、メイドの採用基準も運営の作法も変わらざるを得ない。65歳以上であれば「やりたい」という人をほぼ受け入れる現在の仕組みは、事業性とは両立しない。
さらに、「冥土弁当」は2025年末から、値段設定そのものをなくしてしまった。当初は600円で提供していたが、完全寄付制に切り替えたのだ。「飲食店ではなくて、居場所として継続的に開催していきたいと考えていた。寄付制にすることで、余裕のある時は応援していただき、大変な時も気兼ねなく来れるような場にしたかった」と代表の星野さんは理由を語る。
結果として、客は平均1000円程度の寄付をしてくれるようになった。1回の開催につき集まる寄付金は5万円前後だ。
