「地元の金融機関で役員だった父が、リタイアした途端に活躍の場がなくなって、どことなく寂しそうで。これに対してもっと世の中は目を向けるべきなんじゃないかっていう憤りを感じているんです」
専業主婦だった母の生活スタイルは変わらなかったが、退職後、交友関係がなくなり、家に閉じこもりがちになった父の変化は際立って見えた。女性はコミュニケーションがうまい人が多いが、男性は孤独に陥りがちだ。「それは僕の20年後、30年後でもあるわけです」と横倉さんは言葉をつむぐ。
会社で責任ある立場に立っていた人が、急に支援される対象になってしまったかのような社会のあり方にも違和感を感じた。
「シニア向けのコンテンツは、ゲートボールとか運動教室とか、自分が面白いと思えるものが少なかったんです。ないなら作ればいい、とやってみたのが冥土喫茶です。これまで世の中で試されていなかっただけで、実際にやってみたらみんな面白がってくれました」
公民館活動なども機能していることは理解したうえで、そこに当てはまらないシニア向けのコンテンツの少なさにメスを入れたのが、冥土喫茶なのだ。
衰退する街と向き合ってきたNPO
桐生はもともと、「西の西陣、東の桐生」と謳われた歴史ある織物の街だ。桐生市の公式サイトによると、奈良時代から織物産業とともに発展したが、1975年をピークに人口が減少。1984年生まれの横倉さんが大人になるにつれ、街の中心部だった駅前の商店街はシャッターが目立つようになった。
桐生市の中心地にあったデニーズは、2021年に閉店。その後も喫茶店や飲食店の閉店があいつぎ、お年寄りが徒歩で気軽に集まれる場所は少なくなった。2024年には70年ぶりに人口が10万人を割り、中心市街地の16%が空き店舗という状況に。2025年の高齢化率は37.7%まで上昇した。
こうした桐生の課題に向き合ってきたのが、NPO法人キッズバレイだ。代表の星野麻実さんによれば、当初は子育て世帯の暮らし方と働き方を両面から支援することを目的として2013年に設立。
