統合前、アイロボット本社(ボストン)を経由してパイシアとやり取りする場合、メール1通に対する返事が翌日、こちらからの再返信にまた翌日と、1つの論点を詰めるのに4日かかることも珍しくなかった。現在は日本法人がパイシアの開発拠点と直接やり取りしており、同じ内容が10〜20分で片付くという。時差がなく、リアルタイムでチャットやビデオ通話ができることが大きい。
開発の役割分担も明確になった。ハードウェアはパイシア、ソフトウェアはアイロボット本社が担う。日本法人は製品全体のコンセプトを本社と詰めた上で、細かいスペックや仕様の調整はパイシアの開発チームに直接要望を伝えている。
統合前は、日本法人から本社へ要望を出し、本社がサプライヤーとしてのパイシアに発注するという流れだった。今は全体のモデル構成やコンセプトは本社を通すが、個別の仕様調整は日本とパイシアの間で直接やり取りする。パイシア側もアイロボットの優先度を上げており、対応の速さにつながっているという。
昨年12月の取材で、コーエンCEOは過去のiRobotに「過剰設計が散見された」と認め、山田社長は統合を「傘下というより垂直統合」と表現していた(関連記事:ルンバのiRobot、中国企業傘下で再出発へ。創業者は「悲劇」、現CEO「過剰設計だった」)。あれから半年、山田社長は「正直、期待以上にいい合併だった」と語る。
Plus 515は日本先行で発売するが、中国でもほぼ同時期に投入される。米欧への展開も予定しており、ボリュームは米欧の方が大きくなる見込みだ。ルンバ ミニに続き、日本法人が発案した製品がグローバルで販売される形になる。
日本独自のサービスも始動
Plus 515の発売と同時に、コンシェルジュサービス「ルンバ プレミアム特典」も始まる。メーカー保証を1年から3年に延長するほか、専用のサポートダイヤルと交換用アクセサリーの同梱が付く。3年保証は国内の主要ロボット掃除機メーカーで最長だという。今後の新製品にも展開する予定だが、付加価値を訴求できる価格帯の製品に限定する方針だ。
日本独自のサービスとした背景には、日本特有の消費者行動がある。海外のユーザーは故障時にメールやチャットで問い合わせる傾向が強いが、日本のユーザーは購入直後にWi-Fiの接続方法やマップの作り方を電話で聞いてくるケースが多い。山田社長は「すぐつながる専用ダイヤルがないと体験が悪くなる」と説明した。
製品もサービスも日本法人が発案し、それがグローバルにも広がり始めている。2月の記事(ルンバが世界最小クラスのロボット掃除機を日本先行投入、経営統合後の再出発で「過剰設計」を改め普及率10%の壁に挑む)では、パイシアとの垂直統合の効果が本格的に表れるのはルンバ ミニの次の製品からだと書いた。ルンバ ミニの販売計画比2倍という実績、そしてパイシアとの直接連携で生まれた515の投入。「過剰設計」を改め日本市場に合わせるという方向性は、具体的な成果を伴い始めている。
