そして、最後に最も重要なのは、最も一般的に言及されるこのことである。つまり、AIバブルは、リーマンショックとの違いとして「銀行システムは巻き込まれていない、金融システム不安にはならない」という主張である。これこそ決定的に違う。
金融システムは実は危ない、という意味ではない。プライベートクレジットは危ないし、1980年代の日本のバブルも、銀行の外のノンバンク危機がメインだったから、シャドウバンクが危ないのは銀行システムが危ないのと同じだ。これらの危険性も重要な話であり、プライベートクレジットのリスクは、予想よりも連鎖的に膨らむからダメージは大きいとは思うが、ここではもっと重大で決定的な問題がある。
今回のバブルは社会そのものを巻き込んでいる
不動産バブルが困るのは、必ず銀行セクターを巻き込むからであり、かつ、金融市場バブルであっても実体経済は別だ、という場合であっても、不動産は金融市場と実体経済をつないでいるから、金融バブルが不動産バブルを伴うと、実体経済にもバブルは侵入してきて、破綻したときは、経済、社会全体が被害をこうむり、しりぬぐいは税金で行われるからだ。80年代の日本も、リーマンショックもそのため影響が大きかった。今回は、銀行セクターではなく、もっと大事なものが巻き込まれてしまっているのだ。
つまり、今回のバブルは「分断バブル」である。バブルというものは、常に分断なのではある。分断された、囲われた場所にカネが流れ込み、その場所が膨張し、最後はそれに耐えられず破裂する、もしくは、途中で穴が抜け、急速にしぼむ。
しかし、いつも分断が起きていて、分断はバブルの本質であるにもかかわらず、あえて「分断バブル」と名前を付けて呼ばなければいけないほど、AI関連の一部の世界が異常に膨張している。しかし、それは前述したように、染み出てきている。こちらの世界に浸水している。いや、それは加速し、洪水となり押し寄せてきている。
分断であり、バブルであぶく銭を手に入れたのちに、こちらに洪水となり溢れてきて、カネがあふれてきたと、こちらの人々が群がってしまった。
つまり、銀行システムを巻き込んでいない、金融システムを巻き込んでいない。しかし、もっともっと重要で核心であり最重要である、社会そのものを巻き込んでしまっているのだ。
例えば、高校生が1兆円企業を日本でも目指すようになった。それが夢であり、この夢は何よりも正しくかっこいい夢だと社会でも思われている。起業家になって「1兆円」企業、あるいはアメリカで起業して「1兆ドル」企業を目指します、などというと社会がほめてくれる。「俺は山師になって、大儲けするんだ」、と言ったら詐欺容疑で尋問されるかもしれないのに、物は言いようだ。
