第1に、この主張をする人々は、バブルの中にいる人々である。利害からのポジショントークもあるし、実際バブルがはじけると困るので、それを信じたくないという無意識の力も働いている。
第2に、ブームとバブルが同時に起きているが、これは多くのバブルで見られる典型的な現象である。ITバブルがまさにそうだし、19世紀半ばの鉄道ブーム、19世紀末から20世紀のバブルも電気などの第二次産業革命による。
冷戦後の大きなバブルの波の中の「最後の巨大バブル」
第3に、前述のニューヨークタイムズの記事にあるように、ITバブルは有象無象のスタートアップ、今回は、かつてGAFAM、その後、マグニフィセント7、いまやそれにオープンAIなどのAI勢、関連する半導体勢を加えた超大企業がバブルになっているから、倒産はしないし、財務的には盤石の背景がある、と主張されているが、これはまったく逆である。
バブルの籠に乗っている、カネ、モノ、ヒト、時間とエネルギーが、ITバブル時と比べ物にならないくらい膨大である。データセンターも電力も、そうである。バブルが崩壊すると、これらの多くが無駄になり、過剰設備になる。1980年代の日本のバブルと同じだ。だから、失う財産が今度はとてつもなく大きいのである。それは倒産しなくても、失われる時価総額、実物資産への埋没投資額、実体のあるものが大きく毀損するのであるから、とてつもないダメージとなる。
第4に、ITバブルは、アメリカの長期停滞の後に起きた。オイルショックが起きた73年以降停滞し、80年代も実体経済はなかなかよくならず、株式の死の79年を底に、少しずつ低位から上がってきた後のバブルである。
だから、まだまだ序の口のうちに崩壊した。しかし、今回は、90年の冷戦終結後の中期の大きなバブルの波の中の、最後のバブルである。ITバブル、サブプライムバブル、量的緩和バブル、コロナバブル、財政バブル、これらが全部累積したバブルが、さらにAIによって膨らまされたバブルなので、とてつもなく膨らんでいる。だから、崩壊したら、ほとんど立ち直れない。時間がかかるし、失ったエネルギーはとんでもない質・量である。
第5に、今はインフレが起きている中でのバブルである。これはやっかいだ。金利を下げられない。金融緩和もできない。財政も苦しいし、長期金利が上がっている中で、財政出動をしないといけない。バブル崩壊後の救済がほとんどできないだろう。
第6に、第5と同じであるが、インフレというのは、バブルにとって、投資というものにとって、もっとも致命的に打撃をもたらすものである。一般には金利が最重要と思われているが、そうではない。インフレのほうが打撃の広さ、深さはとてつもない。インフレで不況で、資産市場が暴落していると、完全な八方ふさがりであり、救いがないのである(「今は『すべての投資』をやめるとき、2026年は『投資は死んだ』と言われる『歴史的な年』になる、2026年5月2日配信、も参照)。
