NHKの連続テレビ小説「風、薫る」がスタートした。日本の看護婦のパイオニアとなった大関和(おおぜき ちか)と鈴木雅(すずき まさ)を主人公のモチーフとしている。時代は、明治。医療の現場は男性のもので、女性が医療分野の仕事に就くことへ理解がまだなかった頃のことである。看護の世界に飛び込んだ二人はいかにして、日本近代看護の礎を築いたのだろうか。著述家で偉人研究家の真山知幸氏が解説する。
近代看護の原点となった『看護覚え書き』
NHK連続テレビ小説「風、薫る」の中で、にわかに注目を集めている1冊の本がある。フローレンス・ナイチンゲールの著書『看護覚え書き』だ。
ドラマでは、ナイチンゲールの教育を受けたトレインド・ナース、バーンズ(演:エマ・ハワード)の来日が遅れており、一ノ瀬りん(演:見上愛)ら新入生が不安になる中、バーンズから宿題が出されることになる。
それは、バーンズが到着するまでに、ナイチンゲールの書いた『NOTES ON NURSING(看護覚え書き)』を読み終えたうえで、最後の章の意味を理解する……というものだった。
『看護覚え書き』が刊行されたのは、1859年12月のこと。ナイチンゲールが30代の終わりに、クリミア戦争での野戦病院での経験をもとに書き上げたものだ。刊行されるやいなやたちまち評判を呼び、2カ月で1万5000部という大ヒットとなる。
勘違いされやすいが、本書は看護婦のための「看護の手引き書」ではない。ナイチンゲールは同書で「すべての女性が人生のある時期に看護婦にならなくてはならない」と書いている。つまり、看護職や介護職だけではなく、家庭で介護をする人など、ケアに関わるすべての人々に向けて書いたのが、『看護覚え書き』である。
いったい、「看護」とは何か。本書は、看護の概念そのものを根底から定義し直した点においても、意義深い1冊となっている。ナイチンゲールは次のように記している。
「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えること、こういったことのすべてを患者の生命力の消耗を最小にするように整えること」
