さらに、病気そのものに対する哲学も独特なものだった。次のように書いている。
「病気とは、毒されたり衰えたりする過程を癒そうとする自然の努力の現われであり、何週間も何ヶ月も以前から気づかれずに始まっている」
体内ではたらく自然治癒力をいかに引き出すか。それこそが看護の役割だという視点は、現代看護の根本思想につながっているといえよう。
大反響を受けて版を改めて刊行された
朝ドラが描く明治時代の日本において、この書物は最先端の看護知識として輸入されることになる。
『看護覚え書き』がたちまちヒットになると、出版社に勧められて、ナイチンゲールは第2版となる増補改訂版を執筆。初版から約半年後の1860年7月に刊行している。
この第2版は、看護婦向けの章を追加して、より専門職に向けたものだ。高額だったことから欧米ではそれほど普及しなかったが、日本では看護教育において、この第2版が多く採用されている。
さらに、その翌年には、第2版の内容から専門的なものを取り除いた、大衆向けの廉価版を第3版として刊行。文章も平易な表現にし、論旨もわかりやすくするなどの工夫がなされている。ナイチンゲールがこの『看護覚え書き』を一人でも多くの人に読んでほしいと、情熱を注いでいたことがわかる。
原著刊行から150年以上が経つ今もなお、看護職はもとより介護職、家族介護者など、ケアに関わるすべての人々にとって役立つ指南書として読み継がれている『看護覚え書き』。朝ドラで再び注目されて、改めて広く読まれるきっかけとなれば、ナイチンゲールにとっても喜ばしいことだろう。
【参考文献】
フロレンス・ナイティンゲール 著 小玉香津子・尾田葉子訳『看護覚え書き』(日本看護協会出版会)
フロレンス・ナイチンゲール著、湯槇ます、薄井坦子、小玉香津子、田村眞、小南吉彦訳 『看護覚え書』(現代社)
青山誠著『大関和 看護に人生を捧げた日本のナイチンゲール』(角川文庫)
田中ひかる著『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中公文庫)
田中ひかる監修『大関和 明治のナイチンゲールたち』(平凡社)
櫻庭由紀子著『戦う白衣の天使 大関和・鈴木雅ものがたり』(内外出版社)
