では、なぜ会員制のバーという形態、しかもケーキではなくパフェを選んだのだろうか。
会員制にした理由は、スイーツや一次産業の「持続可能性」実現だという。つまり会員制とすることで、月単位の収入がコントロールでき、必要な食材も正確に予測できる。農家にとっても安定した顧客になるため、例えば何cmのいちご、といった細かい注文にも応えてもらいやすくなる。
会員制にした理由
「トレンドに左右されない独自の経済圏を作れるという理由も大きいです。日本のスイーツの寿命は短い。テレビが取り上げて行列ができる、でも1カ月後には誰も並んでいない。計画的なものづくりができなくなってしまい、事業が傾いてしまう。パティシエがせっかく修行しても、育つ頃にはお店がなくなってしまうわけです。
会員制にすることで、流行やマーケティング的に作られた慣習に左右されることなく、旬のフルーツを使った本当に美味しいものを提供し、われわれパティシエ、農家、お客様、三方良しの仕組みを回していくことができると考えています」
またパフェを選んだのにも、深い理由があった。
林氏によると、100年前、冷凍技術の発明を背景に、生クリームやムース、アイスクリームという軽い食感のスイーツが可能になった。そしてフランスではそれらを盛り合わせた「パルフェ」が誕生する。今の日本で知られているパフェは、それをまねて、日本の喫茶店文化の中、独自に生み出されたものだそうだ。
しかし日本のパフェは、フランス語で「パーフェクト=完全」の意味を持つスイーツとは大きく異なると、林氏は言う。
まず日本の市場では旬より前倒しで味わう習慣が根付いているため、旬の本当に美味しいフルーツを使っているところは少ない。また多くはコーンフレークやウェハースが添えられているが、フルーツやアイスクリームの水分でしなしなになっていることがしばしばだ。
その日本独自の不完全なパフェを、本当の「パーフェクト」に作り変えていきたい、林氏にはそうした思いがあるという。またパフェを選んだことは、自身のパティシエとしてのアイデンティにも関わっている。
「アルザスの、誰もが尊敬するようなパティスリーで修行したので、その後フランスに残るかは真剣に悩みました。しかし自分が日本人としてパティシエをやる意味を突き詰めたとき、フルーツなど、日本の優れた食材を生かしながら日本人のためのスイーツをデザインする、これが、私のやりたいことだと考えました」
