見たこともない醤油がずらりと並んだ棚を前に、「醤油って、こんなに種類があるんだ!」と感動した那波さんは、すぐに取引を開始した。味噌やマヨネーズ、ドレッシングなども順次切り替えた。
ところが客の反応は、いまひとつ。「高い!」との声。
それでも、「こんな素材を使っていて……」と説明すると納得して買ってくれた。手応えをつかんだが、那波さんには資金繰りや従業員のマネジメントなどの社長業もある。説明していては、売り場から一歩も離れられない。
苦肉の策で始めた「ポップ」とマイクパフォーマンス
ならばと苦肉の策で始めたのがポップだった。短い文章で商品のよさをわかりやすく伝える。ただ、ポップはその商品の前を通った人しか目にしない。「もったいないな」と思った那波さんは、こう考えた。
マイクでしゃべれば、店内全体に伝わる──。
「うちには本当に良い商品しかないから。正々堂々と、ひたすらにしゃべっているだけです」
店内に並ぶこだわり商品は、いまや9割。那波さんのマイクパフォーマンスとポップは、全国放送のテレビで何度も取り上げられる。
4億の借金から救ってくれた平田弁護士が、「いつか、この男は日本中に知られる人間になる」と言った日から16年。その言葉は、現実になっている。
だが、ひまわり市場の奇跡を支えるのは、那波さん一人ではない。築地、銀座、大手航空会社のファーストクラス。それらで働いていた一流の職人たちが、なぜかこの小さなスーパーに集まっている。
「給料は経費じゃない、投資だ」「1円も買い叩くな」
理由は、那波さんが繰り返す2つの言葉にあった。
