香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は、政府・与党内で議論されている株主提案権の厳格化について、アクティビスト(物言う株主)には全く影響がなく、個人投資家の権利を制限するものとの見方を示した。
法務省の法制審議会は3月に取りまとめた会社法見直しに向けた中間試案で、株主提案権の行使を議決権の1%を保有する株主に限定することを提案している。自民党の資産運用立国議員連盟も5月に同様の提案を行った。法務省は26年度中に結論を得ることを目指している。
背景には、少額の投資でも株主提案ができる現状に対して、経団連など経済界の一部に濫用(らんよう)的な株主提案が行われるという懸念がある。自民党内でも今週、アクティビスト対応について司法制度調査会と金融調査会が合同会議を行うなど、議論が活発化している。
フィッシャー氏は、こうした動きが国内の株主アクティビズムに影響を与えることはないとみる。株主提案を行うアクティビストの大半は1%以上の議決権を保有しており、オアシスも通常5%以上の議決権を持っているため、引き続き株主提案ができると指摘した。
同氏は「金持ちやファンドのみが会社に物申すことができ、個人投資家から株主提案権を奪うような設計。企業の個人に対する説明責任を奪うのは好ましくない」と27日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。
オアシスは日本で最も活発なアクティビストの一つ。ブルームバーグのデータによれば、日本株への投資は公開されたポジションだけでも花王やニデックなど35社で1兆7000億円近くに上る。
同社は6月の株主総会シーズンに向けて積極的にキャンペーンを展開しており、京セラに対して山口悟郎会長の解任や3500億円の自社株買いを求める株主提案を提出したほか、カドカワには夏野剛社長の解任を求める議案を出した。東京製鉄の株主に対しては、奈良暢明社長の再任議案に反対票を投じるよう呼び掛けている。
アクティビストなどの株主による提案が総会で承認されることは少ないが、近年は多くの支持を集めることが増えている。花王が4月に開いた臨時株主総会では、サプライチェーン(供給網)上のリスク管理体制などを調査することを求めたオアシスの提案に、ノルウェーの年金基金など一部の機関投資家が賛同し、30%の賛成が集まった。オアシスは花王の議決権の12.5%を保有している。
著者:佐野日出之、谷口崇子
