このスタンスが、結果的に健介という人物の輪郭を作っていく。実際に是枝監督から、細かな演技指導を受けることはほとんどなかったという。
「本当に、監督から細かく『ここはこうして』と言われることは、3カ月間ほとんどなかったんです。言われすぎると僕が混乱すると思って、あえてだったのかもしれません。だから『何の役作りもしていない』。考え込みすぎず、そのままでいることを大事にしていました」
芸人としての“間”が、芝居になった
ただ、その“何もしなさ”は、空っぽという意味ではない。
20年以上、芸人として人と向き合ってきた時間が、すでに身体に染みついていた。
「人が話している喋り方や内容を聞いていて、『ここで入ったほうがいいな』とか、『ここではこういう表情をしていたほうがいいな』とか、『この人が喋り終わったあとに、もう少し無視してみようか』とか。そういうことが仕事なんです、僕らは」
大悟が現場に持ち込んでいたのは、芝居のセオリーというより、芸人として積み重ねてきた“間”の感覚だった。
「そういう意味では、相手役のセリフに対してどう反応するかというところでは、役に立ったのかもしれないですね。トークバラエティで聞き手をしているときの感覚に近い部分もあったかもしれません」
完成した作品を見た大悟にとって、印象的だったのは、自分の“歩き方”だった。
「監督が毎回というか、すごく褒めてくれるのは、歩いているシーンなんです。自分で見ても、普段の僕の歩き方なんですけど、なんか『あんな残酷な人間の歩き方をするんや』と思いました。残酷というか、哀愁とも言えるし、怖さもあるし」
