キーをドックに差し込むことで歴史的なフェラーリ・イエローが画面全体に広がる起動シークエンスや、頭上のコントロール・パネルに配置された物理的レバーで起動するローンチ・モードなど、触覚に訴える「美しい機械」としての魅力を慎重に、かつ確実にディテールへと宿らせている。
ローマで行われたアンベールの時、フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOが、筆者にルーチェに込めた造形と技術の真意を熱く語ってくれた。
ヴィーニャ氏によれば、ルーチェの意匠やパッケージは無駄に長いボンネットを持つ従来のEVとは一線を画し、電動パワートレインのコンパクトさを最大限に活かした未来的なものであるという。
新しい技術を導入するならば、ソニーのウォークマンがポータブル電子機器の形を変えたように、デザインもゼロから見直すのが当然であり、単に既存の形にEVシステムを載せ替えるだけでは、テクノロジーへの敬意(リスペクト)を欠くと同氏は指摘する。
そして何より、「フェラーリの出発点は機能要件ではなくエモーション(感情)にある」と強調した。
内燃機関以上の未知なるエモーションを届けることこそが、ルーチェのデザインコンセプトであり、その独創的な造形に宿る真意は、時間をかけて触れることで必ず乗り手に伝わると、ヴィーニャ氏は強い確信を示したのだ。
空力ドラッグ低減への偏執的な割り切り
空力性能におけるアプローチも、単なる派手なダウンフォース競争からの脱却を意味している。
ルーチェは、空気抵抗係数をマラネッロのロードカー史上最小にするという高い目標を掲げ、徹底的に突起やくぼみを排除した滑らかな凸形状のシルエットを導き出した。
次ページが続きます:
【フェラリスタが注目したパワートレインの熟成度】
